僕は小中学生の頃から両親に映画館に連れて行ってもらったり、レンタルビデオ屋に行って何本もまとめて借りて、よく映画を見ていましたが、高校生からはそれまでただ楽しんで映画を見ていたのが、ファッション、音楽、カルチャートレンドとして映画を見るようになりました。
17歳の時、木村拓哉さんや武田真治さんが「今注目している俳優はレオナルド・ディカプリオだ」と言っていたニュース記事を見たのがきっかけで友達とレンタルビデオ屋に行って見つけたのが、レオナルド・ディカプリオ主演の『バスケットボール・ダイアリーズ』(スコット・カルヴァート監督/1995)です。
当時マイケル・ジョーダンの影響でバスケットボールの人気があった時代で、スポーツの青春映画かと思って見たんですが、バスケットボールを一生懸命やっている爽やかな青年たちが、多感で精神が浮遊している時期に多くの誘惑を受けたり、挫折があったりして不良になっていくんですね。その内どんどん麻薬にはまっていって、圧倒的に地まで堕ちていく。
ディカプリオさんの演技には、この人は本当に麻薬をやりながらお芝居をしているんじゃないか?と思う程の強烈なインパクトがあったんです。こんな生活や行動をしていたら、もちろん母親は心配するし、体はどんどんボロボロになっていく、地に堕ちていく。みたいなことがお芝居を通じて痛いほど伝わってきました。役に半分同情もありながら、「なぜスポーツ青年が麻薬に染まってしまったんだろう?」とか「更生するにはどうしたら良いのか?」、「何故こうなった?」など、映画を見ながら「考える」ことが出来るということを初めて味わいました。
僕は大人しい俗に言う目立たない子から不良まで、分け隔てなく色々な人と仲が良かった。一緒に『バスケットボール・ダイアリーズ』を見た友達は“不良”だったんですが、見終った後に「俺もこんな風に無茶苦茶なの?」と聞いてきました。その不良の友達は大きな挫折があったり家庭環境に問題を抱えていて。多分自分と照らし合わせながら見ていたと思う。青年たちが堕ちていく様と自分の堕ちていく様を重ねていた。変わってしまった息子を突き放すお母さんのシーンが自分に被った。今の自分なら同じように見捨てられても仕方ないかもって、恐怖に変わったんじゃないかな。僕はその質問に対して「うん、結構やばいよ」と伝えたら「ちょっと気持ち悪いね。やばいね。やめるわ」って不良をやめて、その後就職活動に精を出す様になりました。
「映画の力」ってすごい。映画に衝撃を受けて変わる人がいっぱいいるだろうなって感じ取れたことが、僕も映画の製作をやって人に影響を与えたり、心に躍動を与えたいなって思うようになったきっかけです。
学校の教育だと人と面と向かわないと物事は伝えられませんが、映画って映画館、レンタルビデオ屋さんにいっぱいあるんだよなって。これは凄いことだと。子どもたちはもちろん、多感な時期に多種多様な映画の文化に触れ合って、映画を通して色々な学びや経験をして欲しいと思います。