西川美和監督『永い言い訳』インタビュー | C2[シーツー]BLOG

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川本 朗(カワモト アキラ)▶名古屋発、シネマ・クロス・メディア
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『ゆれる』『ディア・ドクター』の西川美和監督が、第153回直木賞候補作にもなった自著を自身の監督・脚本により映画化した最新作。



主人公の津村啓こと衣笠幸夫役に『日本のいちばん長い日』『天空の蜂』での演技が大きな話題と高い評価を得て、昨年度日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞した本木雅弘。その他ミュージシャンの竹原ピストル、堀内敬子、深津絵里、池松壮亮、黒木華、山田真歩などの実力派が顔を揃えるのに加え、松岡依都美、岩井秀人、康すおん、戸次重幸、淵上泰史、ジジ・ぶぅ、小林勝也など舞台・映画など様々なジャンルで活躍する屈指の個性派たちが脇を固め、ひとときも見逃したくない緊張感と豊かさにあふれた映画空間を創り上げた。



予期せず家族を失った者たちはどのように人生を取り戻すのか—。限りなく厳しくも優しい眼差しで描かれる、人と人の<別れと出会い>。未知の感動に深く心が揺さぶられる、愛すべき新たな傑作の誕生!!



今回、メガホンをとった西川美和監督がキャンペーンで来名。あくまで映画を軸に、自由度を求めた小説から見事に映画化した西川監督をインタビュー!

INTERVIEW



Q:原作小説を映画化する場合、自分の小説を映画化できる監督っていないと思います。どんな手順で小説に着手していったのですか?

西川「オリジナル脚本を作る時、たくさん取材をしたり、登場人物のバックグラウンドを履歴書のような形とか、散文で書いたり、しっかり作った上で物語を構築していきます。映画のための物語作りが前提なので、いろいろなエピソードを色々作ってみても、2時間の尺の中で、水面上に上がってくるものを取捨選択しなければなりません。もうひとつは、シビアな話ですけど、自分に与えられた予算の中で描ける物語を作らなければなりません。この2つの大きな軸の範疇でしか物語を作れないんです。その制約の中で、脚本を作って、撮影するわけなんですが、すべての作業が終わった後に取りこぼした取材ネタや、エピソードが宙に浮いていて、それが心残りで『ディア・ドクター』という作品の時に、「きのうの神様」という小説を映画の後に書きました。映画のストーリーラインは、この小説の中には繰り返されないのですが、余り物の中で別の料理をすることができました。

物語を作る時、その素材となるベース作りをしっかりやるので、それがお蔵入りすることなく一度すべてを出し切りたい。一度、時間と予算から自由になって、書きたいことをとにかく1回書きたかったんです。これまで映画4作品を作り、5作品目で小説からなんの制約をない形でトライしたのが本作です。時間の制約がないので、例えば子供時代にまで遡ることもできるし、もの言わずはずの脇の登場人物から見た世界も描けるし、主人公の人間像も深化できるしと、本当に自由に描くことができるので、物語がより立体的になります。登場人物のキャラクター設定を充分に自分の中で下準備できるんです。

小説ではありとあらゆるものをすべてスケッチしてみる。映画では、映像化するのに相応しい場面はどこなのかをあとからゆっくり考えてみるというアプローチをしてみました」

Q:この小説は直木賞候補作になりましたが、書き終えた時の手応えは?

西川「何の枷もなく書けたことがとにかく気持ちよかったですね。逆に言うと、言葉だけの表現の中で世界を作らなくてはならないので、自分の引き出しのなさや、体力のなさにも直面しましたが、開放感があって楽しかったという印象です。遊びの自由な時間はここまで、ここからは映画というシビアな制約を背負っていかなければならないと決意しました。映画があるから小説が自由で あって、それを本業にしてしまうと自由がなくなって辛くなると感じました。書く事が楽しい、自由だなと今後も思い続けていきたいので、やはり映画を軸にしてきたいと改めて思いました」

Q:今回の物語でも、やはり取材することは重要でしたか?

西川「今回は小説家という設定なのですが、小説家の方にはひとりも取材していません。いろいろな書き方や暮らしぶりがあるのは分かっていますし、机に向かって書くという行為は、私もやっているこなので、今回の男性小説家のリアリティにあまり重きを置きませんでした。それより、私が一番分からなかったことは、子供がいる暮らしだったんです。どんな時間配分になるのか? 家の中にどんな物が必要なのか? お子さんのいる知り合いのお宅にお邪魔して、実際に生活させてもらう中で参考にしました」

Q:冷めた夫婦関係にした理由は?


西川「今回、『これだけは一番嫌!』という別れからスタートさせようと思ったんです。あれが愛し合っている夫婦であれば、結婚して間もなくて、お互いに思いやりと愛情に満ちた関係であると、単純ではないですが深い悲しみに落ちていく物語になったと思います。『もう愛し合えてないかも?』という倦怠期夫婦の関係が崩れるってどうだろう? より複雑でやるせないのではないかと想像しました。最低最悪な別れ方を模索した結果、こんな夫婦像になりました」

Q:主人公の人気作家のキャラクターは!?

西川「主人公のパーソナリティに関しては、半分以上は私自身を投影したものでもあります。名前はそこそこ知られていて、世間からちやほやされることもありますが、世間が評価するほど実があるかというと、非常に怪しいんですよね。モノを作る人間のどこか地に足がついてないような後ろめたさを日々感じています。とくに震災の時には、自分の仕事って何だろう? こんな大時に何の役にもたたない自分にふがいなさを感じました。それに比べて、髪を切る技術のある人とか、物を運ぶ仕事に就いている人は、ライフラインに直結している強さがあります。虚業という仕事に意味がないわけではありませんけれども、自分のスタンスの危うさに直面することもありますし、常に実業と呼ばれる人たちに対する引け目も感じます。そんな自分の想いを半分、もう半分は、私がこれまでに観察してきた男の性を投影してみました。『なんで男ってこんなことにこだわるの?』、『どっちだっていいのに?』、『いい歳してそんなこと?』という、対面を重んじる社会的な生き物だと思います。主人公は、男性の愚かさと、私自身の両方がミックスされています」

Q:最後に映画ファンにメッセージを!

西川「自分の作品はいつも崩壊から始まるんですけど、いろいろな紆余曲折を経ながらも珍しく心温まる、かすかな幸福感には辿り着ける作品になりました。いつもは家族で観て欲しいとはなかなか言いづらいですが、別にいっしょに観なくてもいいのですが、この映画を観た後、奥さんが旦那にすすめるとか、旦那が奥さんにすすめるとか、家族で共有できる作品になったらうれしいです。是非みなさんで劇場にお越し下さい!」


『永い言い訳』2016年10月14日(金)よりTOHOシネマズ名古屋ベイシティほかROADSHOW

公式サイト


(C)2016「永い言い訳」製作委員会



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