見えない道 | 一冊の詩集

一冊の詩集

人生終わるとき一冊の詩集が出来上がっていたら。
一日一日を大切に。

 「見えない道」

 

   Ⅰ

 

打たれて

目が拓くのです

 

人間には

見えない道が

 

   *

 

綱を引いても

ロバが前に進まなかったように

 

人間には

見えない道があるのです

 

   *

 

とまれ

とどまって

 

あるべき道を

進むのだ

 

   *

 

人間は時に

ドンデン返って真実を知るのです

 

そのために

常に祈ること

 

   *

 

一人で生きるには

この世は荷が重すぎます

 

だから人と人は

苦しみを背負いあいながら

 

   *

 

見えない道を

ぽくぽくと

 

歩きつづけることが

できるのです

 

   Ⅱ

 

風も闇も

かたりとも言わない

 

むしろそのとき

いのちは動く

 

むしろ目の前を

うねりながら通り過ぎている

 

   *

 

遥か遠くに

あるもの

 

さえずりつづける

小鳥のように

 

咲きつづける

一輪のように

 

   *

 

私たちはいつの間にか

便利で明解で

 

とても速い

でも ここは

 

つつましく

安らかでした

 

   *

 

人間が

人間を生きるのです

 

ここに戻ってきて

生きることを知りました

 

だからもう一度

生きたいのです

 

   Ⅲ

 

それは

一滴

 

それは

一粒

 

それは

一筆

 

片言でいい

いのちがいのちに転換したら

 

   *

 

助けられるが

助けるになり

 

あっちとこっちが

流れあい

 

助けるが

助けられるになり

 

いのちの輪が

広がっていく

 

   *

 

やってみないか

つないでみないか

 

いっしょに

生きてみないか

 

悩んで

ぶつかって

 

倒れて

ひらく

 

   *

 

そうやって

編まれていくんじゃないかな

 

ほんとの

キズナ

 

だれもが

だれかを

 

生かして

いるんだ

 

 *****

 

あなたには

信じられないかもしれないけれど

 

私たちを

生かしているのは

 

コトバ

だったのです

 

   *

 

食べるものも

住む場所も

 

衣服も

薬も

 

なくては

ならないけれど

 

   *

 

でもね

どうしても

 

いのちを

つなぐのは

 

それだけでは

だめ

 

   *

 

いのちが

いのちを

 

つかんで

つないで

 

つながり

あって

 

   *

 

生きる

前に

 

まず

いのちの道が

 

人間には

必要なんじゃないかしら

              motomi

 

※ 前方が塞がったときこそ、道が見えます。