ある匂いをかいだときにふいに無意識からその匂いだけの思い出が起ちあがってくるように、匂いは他の匂いと関連づけられず、比喩やアナロジーにもならず、記号的にかたづかないかたちで、からだの奥深くに隠しこまれ、〈同じ〉匂いを鍵として引き出されるのをずっと待っている。ずっと、まっている。