Please Plant This Book
by Richard Brautigan



ブローティガンが街頭で無料配布した『この本を植えて下さい』という詩集。
袋状のフォルダに収められた花や植物にまつわる8編の詩はめいめい種袋になっており、実際に、花や野菜の種が入っていた。
6000部しかないらしい。

  *

「スイートアリッサム ロイヤルカーペット」

わたしはきめたんだよ、
たくさんの本が何千もの庭になる、
その庭では子どもたちが
緑を育てるための
やさしい方法を学んだり
遊んだりする、
そんな世界にすむってことをね。

SWEET ALYSSUM ROYAL CARPET

I've decided to live in a world where
books are changed into thousands of
gardens with children playing
in the gardens and learning the gen-
tle ways of green growing things.

  *

「カリフォルニアの名もない花たち」

あと四分の一で
20世紀が終わってしまう
そんな1968年の春、
夢の終わりにむかって旅するみたいに
本を植えよう、土に返そう、
ページから花や野菜が育ってゆくみたいにね

CALIFORNIA NATIVE FLOWERS

In this spring of 1968 with the last
third of the Twentieth Century
travelling like a dream toward its
end, it is time to plant books,
to pass them into the ground, so that
flowers and vegetables may grow
from these pages.

  *

「パセリ」

あらゆる元気と神さまと、
歴史のめぐりあわせに
感謝しているんだ、
この本を手にしたわたしらを
たったいま、
ここに連れてきてくれたことにね。
未来はまるで
緑と星がいっぱいの
玄関のようだ

PARSLEY

I thank the energy, the gods and the
theater of history that brought
us here to this very moment with
this book in our hands, calling
like a future down a green and
starry hall.

  *

「かぼちゃ」

文章を混ぜるならいまがどんぴしゃ、
文章は泥と混ざり、
太陽は句読点と、
雨は動詞と混ざり、
みみずは疑問符のあいだを通り抜ける、
星は芽の生えかけた名詞を照らし、
段落にはしずくがたまる。

SQUASH

The time is right to mix sentences
sentences with dirt and the sun
with punctuation and the rain with
verbs, and for worms to pass
through question marks, and the
stars to shine down on budding
nouns, and the dew to form on
paragraphs.

  *

「カレンデュラ(マリーゴールド)」

友人が心配そうにわたしに話してる、
この世界のおわりとまっくらがりとふしあわせについて。
わたしはやさしく友人のはなしをきいて、それからこういうんだ、
ううん、終わりじゃないよ、
これははじまりなんだよ、
この本がそうであるようにね、
いま、はじまるんだ

CALENDULA

My friends worry and they tell me
about it. They talk of the world
ending, of darkness and disaster.
I always listen gently, and then
say: No, it's not going to end. This
is only a beginning, as this book
is only a beginning.

  *

「にんじん」

思うんだけどね、
1968年の春っていうのは、
わたしらの血をのぞきこんで
心臓がどのへんを流れているのか知るのに
ちょうどいい機会だったんじゃないかな、
たとえばね、花や野菜が
めいめいの心臓を毎日のぞきこんで、
太陽が、彼らの生きたい美しくありたいという思いを、大きな鏡みたいに
うつしているのを
ああそうなんだなって知るのと
それは同じことだとおもうんだ

CARROTS

I think the spring of 1968 is a good
time to look into our blood and
see where our hearts are flowing
as these flowers and vegetables
will look into their hearts evrey day
and see the sun reflecting like a
great mirror their desire to live
and be beautiful.

  *

「レタス」

望むことはひとつだけ、
それはわたしらの子どもが、
わたしがあげた種を
いっしょにまいてくれる庭。

LETTUCE

The only hope we have is our
children and the seeds we give them
and the gardens we plant together.

  *

「シャスタ・デイジー」

願っていることがあるんだ、
いまから32年後の21世紀にね、
花と野菜たちが
こんなふうなささやきの水で
世界をたっぷりとうるおしてくれることを。
「かつてぼくらは一冊の本であり、愛にあふれた手から、この世に生を受けたのです」

SHASTA DAISY

I pray that in thirty-two years
passing that flowers and vegetables
will water the Twenty-First Cen-
tury with their voices telling that
they were once a book turned by
loving hands into life.