皆さん、こんにちは
本日は...
全日本ロードレース選手権シリーズ JSB1000クラス
鈴鹿8時間耐久ロードレース EWCクラス
に参戦中の名門チーム
SDG Team HARC-PRO.Honda
CBR1000RR-R 2024
#6 名越 哲平 選手
こちらの車両をセッティングさせていただきました
本物の JSB1000 車両(メインカー)です...
セッティング後、そのまま、開幕戦のもてぎ2&4を走り切りました
今回のセッティングの目的は?
JSB1000クラスのレギュレーションで指定されている、
ETS-CN燃料(カーボンニュートラル燃料)
こちらに合わせた 4シリンダー独立燃調 を行うため、ハルクプロ様から車両をお持ち込みいただきました♪
どのような燃料?
ハルターマン・カーレス社の100%非化石由来のバイオレーシング燃料で、植物ごみや木材チップなどのバイオマスを原料とし、一般的なガソリンのような、化石由来の原料は一切使用されておりません。
全日本ロードレース選手権JSB1000クラスは、2023年から 世界に先駆けて100%カーボンニュートラル燃料を利用したレースを開催しているのです♪
※世界選手権最高峰MotoGPクラスは2024年から40%非化石由来、2027年から100%非化石由来と段階的に移行される予定です
今後の将来を担う重要な試みということもあり、MotoJPは カーボンニュートラル燃料 への理解を深めるため、2023年からJSB1000のレースサポートを行ってきました♪
2023年(CN燃料初年度) SUGO大会 TOHO Racing 清成 龍一 選手
過去2年の経験から、カーボンニュートラル燃料とハイオク燃料の違いについて、多くを理解してきました。以下にその一部をご紹介します。
ETS-CN燃料の特徴
①しっかりセッティングすればハイオクと同等の出力が得られる
②(セッティング後は)ハイオクに比べて燃料消費量が多い
③(JSB1000の場合)全体的に(特に微小開度が)燃えにくい
④(JSB1000の場合)オイル希釈が起こりやすい
2023年度は情報が少なく、十分な分析が難しい状況でしたが、過去2年間にわたる取り組みを通じて、上記のような課題や傾向が明らかになってきました。しかしながら、いまだに不明な点も多く残されています。
つまり、この燃料の特性について正しく理解し、適切に運用しなければ、マシンがまともに走行できないばかりか、最悪の場合エンジンに致命的な損傷を与える可能性もあります。
幸いなことに、過去2年間におけるJSB1000レースサポートの中で、エンジン破損に至ったケースは一度もありませんでした。それは、適切なセッティングの実施と、オイル管理を徹底したことによる成果だと考えています。
ハルクプロ様からのご依頼
残念ながら、TOHO Racing様は2024年シーズンをもってJSB1000クラスでの活動を終了されることとなりました。
しかしながら今シーズンは、MotoJPが過去2年間にわたって行ってきたレースサポート実績を高く評価いただき、ハルクプロ様より、全日本ロードレース選手権JSB1000クラスにおける年間を通じたレースサポート業務をご依頼いただく運びとなりました。
今回はその一環として、ハルクプロ様オリジナルの 市販レーシング・エギゾーストシステム180度集合 と ETS-CN燃料 に合わせた 4シリンダー独立燃調 を実施させていただきました
ETS-CN燃料は 水温が低い状態で燃焼させると オイル希釈が進みやすい 傾向があるため、今回は 暖気に使用する燃料をハイオク、セッティングに使用する燃料をETS-CN燃料という形で使い分ける必要がありました。
しかし、その都度、JSB1000規格の燃料ビッグタンクを入れ替えるのは非常に大変な作業になるため、今回は暖気用タンク2個を活用しました♪
手順:
1.水温が低い状態はハイオク燃料入りタンクに付け替えて暖気
2.水温が80℃を超えたらCN燃料入りタンクに付け替えてセッティング
もちろん、試行毎にエンジンオイルを抽出して希釈量を記録し、必要に応じてオイル交換を行います。かなり気を使う作業ですが、これもエンジンを労わるために大切なことです
空燃比分布
◆横軸 - スロットル開度
◆縦軸 - エンジン回転数 [RPM]
◆赤色に近いほど 空燃比が薄い、緑色に近いほど 空燃比が濃い を表します
※パフォーマンスを優先した空燃比と比較した場合の評価
HRCレース用ECUのスタンダードマップ(ハイオク燃料が前提)をそのまま適用し、空燃比を測定したところ、ETS-CN燃料利用時 は 全域で空燃比が薄く(赤色表示、最大18.0)なっていることが確認されました。さらに、気筒ごとのばらつきも大きく見られます。
よく「ドライバビリティが悪い」や「電子制御がうまく効かない」といった声を耳にしますが、これは電子制御が燃焼トルクを基に制御される特性によるものです。
現代の電子制御は、エンジン回転数 や グリップ角度に基づくライダー要求トルク、スリップ率 やバンク角、ピッチ角などから算出された (制御別の)目標トルク に基づいて 最終的な出力トルクを調整します。そのため、常に開発時に想定された燃焼トルクが得られていないと、制御が正しく機能しません。
つまり、燃調が適切でないと、計算上よりも少ない燃焼トルクとなり、制御側でさらにトルクを抑える結果となります。そのため、ライダーの意図通りに動かないという現象が発生するのです。
今回使用する ETS-CN燃料 は、ハイオク燃料と特性が異なるため、ベーストルクにも差が出ます。ただし、4気筒それぞれを適切にセッティングすることで、ハイオク燃料に近い出力特性に調整できれば、本来の電子制御性能を活かすことが可能になります。
なお、電子制御になったからといって空燃比が自動で最適化されるわけではありません。まずは現場で走らせる前にベンチ上で確実に燃調を行うことが極めて重要です
セッティング後はハイオク燃料と変わらないスムーズなふけ上がりとなりました♪
空燃比も綺麗に揃っています
そのままではドンツキが凄かった鬼門のスロットルOFF/ON操作による復帰も綺麗です
結局のところ、ハイオク燃料と何ら変わらない挙動に出来れば良いため、微小開度の燃料調整を含めて細かくやることが重要なのです
レース結果&ライダーコメント
2025全日本ロードレース選手権もてぎ2&4
予選7位
決勝5位
レースはファクトリー勢の次(キット車両ではトップ)でゴール出来ましたが、少しでもワークス車両と勝負が出来るよう、引き続きレースサポートを頑張っていきたいと思います
~ 名越哲平選手のコメント ~
昨年まではETS燃料特有のドンツキ症状、唐突なトルク特性などドライバビリティの面で悩まされていましたが、今年はハイオク燃料に近いフィーリングで乗れております。去年に比べて前進は感じられますが、それでもファクトリー勢との差は大きいため、今後のレースもしっかり集中して、少しでも前との差を埋められるよう、引き続き頑張っていきたいと思います。
SDG Team HARC-PRO.Honda #6 名越 哲平 選手
応援よろしくお願いいたします
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