Sun, February 23, 2014

山本小鉄『いちばん強いのは誰だ』 (講談社プラスアルファ文庫)

テーマ:実用・その他

山本小鉄
いちばん強いのは誰だ

タイトルだけ見ると、あらゆる格闘技のなかで「いちばん強いのは誰だ」と考えてゆく本に思えそうだが、さすがに新日本プロレスの重鎮だけあってそれはなかった。

新日本プロレスは最強→その中で「いちばん」→格闘技界最強!

というスタンスである。

この書籍が上梓された2000年8月といえば、小鉄の愛弟子・橋本真也が引退を賭けて柔道王・小川直也と三回目の対戦。ゴールデンタイムの中継内で完敗した数カ月後であり、大ブームとなった総合格闘技でプロレスラーはほとんど通用せず、それまで「格闘技世界一」を標榜していた新日本は、実力を猜疑の眼差しで見られるという冬の時代であった。

いや、正確にいうとプロレスと格闘技は異なるジャンルに属するという認識が、ちまたに広く行き渡りはじめた時代といってよい。その認識は、深く掘り下げてゆくと以下のようになる。

プロレスはプロレスにおける独特の「強さ」があり、それは総合格闘技などで測るものとは違う

この考えはプロレスの実態をほぼ言い当てており、これが事実だからといってプロレスを貶めるものではまったくない。

しかしながら、先に述べたように自ら格闘技と同じ土俵に立ってしまった新日本プロレスは、対外試合で敗北を続ける現状を横目に、格闘技においてプロレスは最強であると強弁しなければならなかったのである。

ちなみにあらいざらいを暴露してしまい、プロレスを地に引きずり下ろしたといわれる新日本プロレス元レフェリーのミスター高橋『流血の魔術 最強の演技』は、翌年の出版である。

いうまでもなく、高橋本が出る前から、すでに格闘技=プロレスという意味でのプロレスの凋落ははじまっていたのである。

さて、そのような苦しい台所事情を覆い隠しながらいかにプロレスをアピールするか。これこそが本書に課せられた試練である。

はっきりいうと、プロレスをまったく知らない人間が本書を読み、プロレスすげー!とは残念ながらならないだろう。

ここに書かれているのは、全日本プロレスとは違い、新日本道場ではグレイシーや総合格闘技に匹敵することを行っているが、試合では観客を楽しませるためその類のものは封印しているといった程度の話だからである。

それが事実なら、PRIDEのリングでやってくれよと突っ込まれるのはいうまでもない。ちなみに総合格闘技のリングで活躍したプロレスラーは、いずれもレスリングのバックボーンがあり、総合格闘技に特化した練習を行っていた。プロレスが通用したというのとは、やや違うのである。

しかし、プロレスラーは本当はすごいんですという話を数多のエピソードを交えて語り尽くしていくあたり、プロレスマニアにはなかなか興味深い。

たとえば猪木が力道山の日本プロレスから独立して新日本プロレスを立ち上げたときグレート小鹿が脅迫にきたとか、ルスカは世界最強の格闘家だ(これはミスター高橋もいっていた)、モハメド・アリのセコンドは拳銃を隠し持って試合に臨んでいたなど、おもしろい話がちらほらと載っているのである。

この例を読んで、ほーと思えるようなプロレス好きな人間ならばそこそこ楽めるだろう。本書でプロレスを救うことはできなかったが、それなりに価値はある一冊といえる。

★★★☆☆
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