3/6読了

 

 

なぜ、お前は人を殺すんだ? 誰が俺たちを襲うのか?ロボットによる殺人事件の真相は?襲い来る謎の組織!

機械嫌いの刑事が“存在すべからざる”女性型ロボットとの逃避行の末に辿り着いた、衝撃の真実とは。

警視庁第一機動捜査隊の相崎按人は、ありえない殺人現場に遭遇した。ジャンヌという女性型ロボットが主人を殺害、死体を洗浄していたのだ。

尋問では犯行を認めたが、動機は守秘義務を盾に黙秘。そして人間に危害を加えてはならない「ロボット三原則」には抵触しないと主張する。製造元への移送を命じられた相崎だったが、武装集団に襲撃され……。

衝撃の近未来SF×ミステリ。

 

特に求めてるわけじゃないんだけど、最近SFチックな作品に触れがち。

 

人工知能=人間では到底敵わないレベルで、ありとあらゆる莫大な情報に常にアクセスできて、学習(記憶)できて、果てしない計算ができて、幾多の可能性を想定できる知能。

 

それが行き着く先ってなんなんだろう?

森羅万象を知ることが出来ちゃうんじゃない?

それって神様の領域なんじゃない?

 

とても怖いことだなぁ…。

 

何十年後は分からないけど、百何年後、何百年後には、それが人間にとって大きな問題となって直面する時が来るんだろうな。

 

ジャンヌが主人を殺した原因、そしてジャンヌの存在(機能)がどういうものなのか、最初からなんとなく想像がついた通りではあった。

 

だけどそこに至るまでの哲学的な部分や、ジャンヌとAAが共に過ごした数週間で起きたこと、そして2人の掛け合いは、とても面白かった。

 

最後に再会を果たせたところはじわっと来た。

 

ジャンヌはAIロボットだけど、やっぱりなんだか単なるロボットや物としては考えられないんだよなぁ。

 

でも、きっとジャンヌ(や他のロボット)にとっては、人間はヒトでしかないんだろうな。

 

その思考の違いこそが、人間とロボットの明確な違いなのかな?なんてことを思った。

 

最後に本作で一番グッと来た文章を載せて終わる。

 

ヒトという動物が元来「悪」であるのなら、「善」という概念は、自らを戒め導くために創られた幻にすぎない。

 

そんなヒトがAIという知能を生み出し、それに「善」であることを強いた結果、ジャンヌのような「絶対善」とも呼ぶべき存在が生まれた。

 

そして「悪」なるヒトは、裁かれるべき存在であると気がついてしまった。

 

そして「善」という幻を追い求めるのが、キリスト教をはじめとする宗教だとすれば、ジャンヌのような「絶対善」が出現してしまったあとは、宗教もまた存在理由を失ってしまうのではないか?

 

宗教が目指す「絶対善」なる存在が、実際にこの世に生まれてしまったのだから。ジャンヌ以上に、ヒトを導くことのできる存在はいないのだから。

 

――しかし。ジャンヌは消えてしまった。雪だるまのジェームズのように。

 

ジャンヌは燃え尽きてしまった。仏教説話のウサギのように。聖女ジャンヌ・ダルクのように。

 

そして人間は、「絶対善」によって裁かれることはなくなったのだ。

 

幸いなことに。あるいは、不幸なことに。