1/30読了

 

詳細:

・「皐月闇」命を絶った青年が残したという一冊の句集。元教師の俳人・作田慮男は教え子の依頼で一つ一つの句を解釈していくのだが、やがて、そこに隠された恐るべき秘密が浮かび上がっていく。

 

・「ぼくとう奇譚」巨大な遊廓で、奇妙な花魁たちと遊ぶ夢を見る男、木下美武。高名な修験者によれば、その夢に隠された謎を解かなければ命が危ないという。そして、夢の中の遊廓の様子もだんだんとおどろおどろしくなっていき……。

 

・「くさびら」朝、起床した杉平進也が目にしたのは、広い庭を埋め尽くす色とりどりの見知らぬキノコだった。輪を描き群生するキノコは、刈り取っても次の日には再生し、杉平家を埋め尽くしていく。キノコの生え方にある規則性を見いだした杉平は、この事態に何者かの意図を感じ取るのだが……。

 

想像を絶する恐怖と緻密な謎解きが読者を圧倒する三編を収録した、貴志祐介真骨頂の中編集。

 

感想:

長編が好きだから、読み始めてから中編3集だと気付いて若干ショック😨

 

だけどタイトルの通り、3話それぞれに違うタイプのじっとりとした怖さがあって、面白く読むことが出来た。

 

いずれも2者の目線があり、

①主人公。自分は普通の人間だと思って物事を考え喋るけど、読者視点からだと奇妙さを感じる。

②主人公と親しい者。この者から見た主人公は…。

 

といった感じで惹き込まれる。

序盤に漂っている若干の不穏さが、あれよあれよという間に恐ろしい展開になっていく様が良かった。

 

本人にとっては記憶から消したい悪行でも、その業は決して忘れさせてくれない。この世は因果応報なのである。

 

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①「皐月闇」

―熱帯地域独特の香りのじめっぽさ

 

俳句って奥が深い!!

 

国語は好きだったけど、学んだのがとうの昔過ぎてすっかり知識も消え失せてしまって、句の解釈のくだりがなかなか難しかった。

 

同じ俳句なのに、先生と元生徒では180度違う解釈でゾワッとしつつ、ある種のどんでん返しが城塚翡翠シリーズみたいで面白かった!

 

これから何度も同じことを繰り返すのかと思うと、ざまぁみろながらもなんだか辛いね。しかしそれも当然の報い。

 

お話もさることながら、俳句の季語や止め方の知識や考え方がすごく興味深かった。

 

②「ぼくとう奇譚」

―湯屋のもわ~っとしたじめっぽさ

 

虫の描写が結構気持ち悪かった💦

 

耳なし芳一、千と千尋の神隠し、遊郭、虫関係の日本昔話あたりの情景が頭に浮かんで、3話の中で一番想像力が働いた。

 

蝶のくだりはなんだか幻想的で、美しさや儚さと同時に執念深さや力強さを感じて、そんな相反するイメージを違和感なく描く貴志さんはすごいなぁと思った。

 

③「くさびら」

―菌類のむわ~んとしたじめっぽさ

 

光景が異常😨よくこんなこと考えついたなぁ。

 

庭中、家中を埋め尽くす色とりどりのキノコ…🤢キノコ好きな親友でもさすがに引くだろうなw

 

なんとなく怪しさはあって、うーん、やはりか…という展開にはなったものの、なぜそんな現象が起きたのかという点に関してはとても切なかった。

 

この文がとても印象的だった⬇️

 

我々が目覚めるとすぐに夢を忘れるように、死者もまた、生きていたときの記憶を急速になくしていきます。

生者と死者の本当の別れとは、生者が死者を忘れることではありません。死者が生者を忘れるのです。

 

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タイトルを意識せずに読み始めたものの、読み進めるにつれ、せっかくなら梅雨の時季に読めば良かったなぁ~と思った。

 

でも湿度が低いカラッカラな今の時季に読むのも気分的にはちょっと潤う感じがして(肌は潤わない真顔)、それもまた一興だった。