7年前に誕生したという、ツッサンの娘に昨日あった。実は、この子がまだ乳母車にのっていたころに渋谷の旧ジャンジャン付近で家族と一緒に散歩した以来だ。
とても溌剌とした小学校2年生の少女になっていた。ツッサンはこの子からつるちゃんと呼ばれていた。ツッサンはこの子の父親だが、婚外子ということだ。

昭和の時代に育った私は、この光景を見ていて、谷崎の細雪、あるいは立原正秋の残りの雪の情感を思い出した。

ある時期、私は立原正秋に惹かれて、というかその彼が作り出そうとした美学にとても憧れて過ごした時期があった。しかし、その時期は熱病のようなもので、その時期が終わった。言葉とは、人を惑わす。その言葉と行動とは必ずしも一致はしない。ツッサンの生き方は、ある意味ではめちゃくちゃであり、しかし、その結果に責任を持つ意味で、今でも朝から深夜まで毎日時給を得るための働いている。そこで、得た金銭と年金とを2世帯に貢ぎこんでいる。

彼は、何でもいいから本を読むのが好きだということを聞いたことがあった。常に本がないと収まらない活字中毒だと思う。既に、絶滅危惧種になろうとしている彼の楽しみは、たまに会ってくれる賢い子に本を渡すことらしい。世界文学全集を漫画で記した本を、昨日もわたしていた。

ゆっくりと、しかし着実に時はたっていくのだということを実感した。