大間線〈未成線〉

第9回

探索日 2024.11.02

公開日 2025.08.13

所在地     青森県むつ市


隧道のアルジ

2024/11/02 12:25 《現在地》

 

入洞から5分は経っただろう。

その間の進行距離は約250メートル。

ここにきて初めて”アイツ”と遭遇することになった。

いたぁぁ!!!

この隧道内に唯一暮らす黒いモフモフ。

一体この隧道の主(あるじ)となってから一体いくつの月日が流れたのだろうか。

人間という脅威がない隧道内はまさに彼らの楽園なのだろう。

どうもここのコウモリは人間を脅威とは思っていないらしい。

隧道生まれ隧道育ちのコウモリにとって人間を見るのはこれが初めてなのだろう。

言葉は悪いが平和ボケというやつである。

探索にとっては好都合で主との無意味な争いを引き起こすことなく通過した。

 

これで6個目。

ここにも何やらいろいろなものが落ちていたが深追いはやめておこう。

木の枝があること自体は普通なのだが問題なのは炭化していることである。

自然界ではそうそう炭化することはない。

炭化するにしても落雷などのイレギュラーイベントが無ければその可能性は地に届くほど低くなる。

おそらく、、人の手によるものだろうな。

何せあの第一隧道が自殺者の増加で塞がれたぐらいだ。

第二隧道とは100メートル程しか離れていない。そりゃ、こっちもそうだよね。

この焚火跡がそういう目的で使われたものではないと祈っている。

これで7本目。距離にすれば350メートル程。

すでに入洞から6分が経過している。

大釈迦隧道で暗闇による精神的恐怖への抵抗力を身に着けたおかげでなんとか普通でいられるが昔の私であればそろそろ限界が来ていただろう。

 

この退避坑は、、きれいだ。

 


隧道を守るものと壊すもの

2024/11/02 12:25 《現在地》

 

ここにきて初めてのものがあった。

壁に空いた穴からは勢いよく湧水が流れ出ている。

この湧水が隧道建設を難しくさせた張本人であるが、この隧道を掘った職人たちは隧道脇に水路を造ることによってうまく最悪の事態を流したようだ。

しかし時の流れは残酷である。

水路の当たる壁面は長年の浸食作用によって削られ細くなっていってしまっている。

これが続けばもちろん隧道は崩壊する。

この隧道、最初のイメージよりもずっと危ない状態にさらされているようであった。

隧道を守るためのものは今や隧道を壊す存在へとなってしまったようだ。

 

これで8本目。仮にこの退避坑が50メートルの等間隔で配置されているのであればもう少しで半分ほどとなるはずだ。

第二隧道の総延長は860メートルと言われている。

現在地はざっと400メートルといったところだろうか。

この退避坑も石なり砂利なりが撒かれていたが特に問題はなさそうだ。

ここでついに私が歩んできた道は一本道へと変化を遂げた。

なぜかこのあたりだけ地面が低くなっており、先ほどの湧水坑を含めた多数の湧水によって水没している。

とはいっても長靴で普通に歩けるほどの水深なので今のところは問題ないだろう。

画像右下に何やら黄色い紐状の物が落ちているがこれは一体何だったのだろうか。

 

そして画像奥を見てほしい。

やはり光があるのである。

ただしその光の場所は推定される坑口からはいまだに350メートル程離れている。

一体どういうことだ。

最悪の状況として光のある場所が崩落により空洞化したのではないかと考えた。

しかしそれに伴うであろうがれきなどが見当たらないためその可能性は低い。

 

それとも通説が間違いであり、木野部峠には3本の隧道が掘られていたというのだろうか。

その前に隧道の半分を走破したことが隧道から伝えられた。

 

これまでの退避坑とはかけ離れた大きな退避坑が現れたのである。

これは国鉄やJRなどで定められている「中サイズ」の退避坑である。

時代ごとに微妙な違いはある物の、この中サイズが退避坑が表すことは隧道の総延長が800メートル以上ということである。(大正15年鉄道省通達『第七六六号』より)

 

そう、隧道は800メートル以上あるのである。

あの光は明らかに坑口ではないことが分かったのだ。

となると考えられる原因は一つしかない。

それを確かめるために歩みを進めたのだが、、、

 

 

な、なんじゃこりゃ〜!!

 

 

つづく。