Vegaの花 #2 | Moran Hitomiオフィシャルブログ「沁みついた遠鳴り」Powered by Ameba

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Vegaの花 #2

幼い頃から身体が弱かった少女にとって、10m四方程度の病室と、書物の中と、壁に飾られた花の絵だけが、彼女の知る世界のほぼ全てだった。

そんな彼女の小さな世界に、ある時、足に怪我を負った少年が迷い込んできた。
少女に似て口数の少ない彼は、壁に飾られた絵に強く興味を示していた。
なぜならその絵に描かれている花は、この世界にある言葉ではとても表現できないような色をしていたからだ。

その花は「Vegaの花」、この世の果てに咲く花と言われている。誰がどのようにして描いたのかは不明だが、とにかく美しい色をしていた。
けれど少女にとっては、それが特別な色だという認識なんて、ある訳がなかった。

いつの日からか、少女は少年に想いを寄せるようになっていた。
彼の顔をまともに見ることができなくて、いつも絵の方を眺めるようにして彼と話していた。
結局、少女が想いを打ち明けるよりも早く、怪我を治してしまった少年は、少女の世界から去っていった。

それから数ヶ月、もう一度でいいから、彼に逢いたいという少女の願いは叶うことなく、ある朝、彼女は永遠の眠りについたのだった。

少女は見晴らしのいい丘の上に埋められた。
茶色くなって干からびた花を抱きかかえた少年がその場所を尋ねてきたのは、更に数年後のことだった。




少年は少女に想いを寄せていた。彼は小さな世界に閉じ込められている少女の為に、世界で最も美しいものを贈ろうと旅に出ていたのだ。
いくつもの街を渡り歩き、宝石や髪飾り、アンティークの小箱に至るまで数々のものを見ても尚、Vegaの花ほど美しいものには巡り会えなかった。
だから彼は何処に咲いているのかもわからない、その花を探す事を決意したのだった。

その揺るぎない意志はついにVegaの花の下へと彼を導いた。

そっと根を傷つけないように、土ごと鉢に移すと、少年は帰路を急いだ。
しかし彼の来た道のりはあまりにも長く遠く、花は次第に枯れていった。


そして全てを知った彼が、彼女の眠る丘にたどり着いた時にはもう、
美しかった花の色は嘘のように消え去り、誰もがよく知る褐色だけを残していた。

絶望した少年は、その花を彼女の側に埋めると三日三晩、その場所で涙を流し続け、また何処かへ旅立っていった

やがて小さな芽が1つ2つと顔を出し、あっという間にVegaの花はその丘を埋め尽くすように咲き乱れた。

そこは、人々からこの世界で最も美しい場所だと噂され、
いつしか「この世の果て」と呼ばれるようになったのである。

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