ASKA - Too many people | やんぬるかな

ASKA - Too many people

Too many people
Too many people
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ASKA
インディーズレーベル (2017-02-22)
売り上げランキング: 52

 個人的な理想としては、音楽は本来、音楽だけで判断されるべきであって、その評価にあたってはその背景にあるものなどは考慮をしないべきであるとは思うのだが、今作にあたっては、これまでに起きた事件に触れない方が不自然であるし、また、一連の事件が起きなければ、このエントリを書くこともなかったであろうから、まず、一連の事件について

 

 2013年からの覚醒剤使用報道から1度目の逮捕に関しては、落胆というよりは、当然の帰結という印象を受けた
 発覚する前からASKAが覚醒剤を使用していると思っていたわけではなく、彼のナイーヴさの延長上に起きるべくして起こった出来事のように思えた
 もちろん、覚醒剤を使用するということは重罪ではあるし、ナイーヴな人間でも法を侵さない人間のほうが大多数である
 ただ、おそらく彼のファンである人間以外はそうとは思っていなかっただろうが、あんなにヴォーカリストととしてもソングライターしても才能に恵まれ、容姿にも恵まれ、レコードセールスにも恵まれ、観客動員にも恵まれ、ユーモアのセンスもあるのに、彼の歌詞やMC(彼のライブを生で見たことがないので、DVDなどで見た印象でしかないのだが)には孤独が滲んでいた
 その孤独が原因となって覚醒剤を使ったのか、あるいは、覚醒剤を使った結果が孤独を産んだのかは今となってはわからないが、幸か不幸かそのナイーヴさがASKAの魅力の一つとなっていたのも否定しようのない事実ではある
 ナイーヴさというのは誰もが抱えているものではあるが、自分はそれに耐えられないという表現をするミュージシャンに共感する

 それ以降の出来事に関しては、ASKAの異常な言動に対して非情に残念な気持ちでいるのと、覚醒剤の再犯率の高さに負けず彼に再起をはかってほしいという気持ちがないまぜになっているような感じである
 本作のジャケットは、彼がこちらを見つめている写真なのだが、その視線を正視できずにいる

 

 

 

 さて、本題
 総論としては、意外にふっきれた出来になっているという印象だ
 メディアからの叩かれっぷりから考えると怨嗟に塗れた曲が並んでもおかしくなかったはずではある

 しかし、そうならなかったのは、一連の出来事から、音楽をすることすらままならない状況が続き、音楽に対する愛情と向き合ったためだと思う
 近年の彼の作品は、手グセで作っているような曲やカバーなどが多く、産みの苦しみを感じさせられることが多かったのだが、本作では手グセを感じる曲もあるのだが、手グセでのメロディーでもとにかく音楽をやりたいんだという彼の意思が伝わってくる

 本作を、彼の曲を聞いたことが無い人、彼にあまり興味のない人には薦めがたいが、彼の近年の活動に忸怩たる思いを抱いていたような自分のような人間には積極的に聞いてほしい
 以下、全曲の感想


 

 ①FUKUOKA

 

 この曲をYouTubeで聞いて、アルバム全体が内省的な音作りになると予想していたわけだが、その予想は裏切られた

 歌詞は、たしかに内省的ではあるのだが、それは彼がデビューして以来そうだから、特筆すべきところではない
 ただ、彼が一連の出来事から東京のスタジオを使うことがままならず、故郷の福岡のスタジオを使わざるを得なかったという状況からこの歌詞が生
まれたことは間違いない

 ところで、彼の歌詞の全てを改めて見返したわけではないのだが、ストレートに故郷を歌う歌詞っていうのは珍しいという印象を受けた


 

 ②Be free

 

 冒頭から続く無調性な感じは「夢の番人」など彼の多数の曲で耳にする雰囲気ではある
 歌詞は題名の通りの感じで、深読みしようと思えばいくらでも深読みできるのだが、上に書いたように、一連の出来事が起きる前から彼はこのよう
な歌詞を書いていた


 ③リハーサル

 

 個人的には「GUYS」「RED HILL」の頃を思い出したのだが、久しぶりに彼のストレートなロックの曲を聞いたような感じがする
 と言っても、他者に対する攻撃性は全く感じられず、上に書いたような音楽をやっている喜びをぶつけているのではないかと思う

 


 ④東京

 

 初めて聞いた人のほとんどが「LOVE SONG」を連想するようなイントロだが、その実「HELLO」と「36度線 -1995夏-」を合わせたような曲である
 「東京」という文字が題名に入っている曲には名曲が多いが、この曲もそうだ


 

 ⑤X1

 

 ヴォーカルのダブリングの感じは珍しく感じる
 あとは、捨て曲…


 

 ⑥それでいいんだ今は

 

 「はるかな国から」と「One Day」を合わせたような曲
 これもイマイチ


 

 ⑦Too many people

 

 彼のソロアルバムに1曲は入っているようなバラードの系譜で、どんなに調子が悪くてもそういった曲を持ってくる彼の才能には感服する
 本作がそういったアルバムだと言っているわけではないのだが、それはさておきこの曲は名曲である
 「NO PAIN NO GAIN」に近いメロディーラインだが、ライブで歌えば必ず大合唱必至である
 つーか、早くライブやってくれ


 

 ⑧と、いう話さ

 

 これも聞き始めは「GUYS」「RED HILL」の頃を思ったものの、聞くうちにそれよりも「Now」に近いなと思うようになったが、Wikipediaによると
ASKA自身も「Now」を意識していたようだ
 この曲もヴォーカルのリバーブを効かせすぎている感じがどうも気になる


 

 ⑨元気か自分

 

 「バーガーショップで逢いましょう」を想起させるような歌詞、メロディ

 

 

 ⑩通り雨

 

 これも既視感がないではないが、いい曲

 

 

 ⑪信じることが楽さ

 

 これはイーグルスの「デスペラード」とASKAの何曲かのミックスという感じだが、これもいい曲
 ここまでの感想の中で歌詞についてあまり触れていないのは、ASKAのいつもの歌詞とそこまで変わりがないからだが、こういう歌詞を一連の出来事の後でも発表できてしまうというのはすごいことだと思う


 

 ⑫未来の勲章

 

 全く関係ないが、サビの歌詞で「タイトでキュートなヒップがシュールなジョークとムードでテレフォンナンバー」っていう曲があったよなとしみじみ
 平歌は出自のフォークを感じるのだが、サビは無理やりひねり出した感がある


 

 ⑬しゃぼん

 

 色んなメロディーが混ざっていて、迷いが感じられる
 あーこれこれっていう感じと、中途半端な残念さが混ざっていて評価に困る曲