■「森田くん、いい薬があるんだよ!」
今から10年以上前のこと、
循環器内科のN教授と
教授室で話をしていたとき、
教授は私にある薬を差し出しました。
■当時、N教授は東大病院の
病院長をしていました。
病院で何かトラブルがあると、
病院長は謝罪会見をしなければいけません。
大勢の報道陣を目の前にしての謝罪会見は、
心臓がバクバクするのだそうです(苦笑)
そこで、N教授は何をしていたかというと、
ドーピングをしていたのです…!
■といっても
怪しい薬ではありません。
これは、β(ベータ)遮断薬と呼ばれる薬です。
簡単にいうと、
交感神経の働きを弱める薬です。
交感神経と言われても、
一般の人にはよくわからないと思います。
簡単に説明しますね。
■これは自律神経の一種です。
自律神経には、
交感神経と副交感神経があります。
これまた簡単に説明すると、
交感神経は運動した時や
緊張した時に活発に働きます。
逆に、
副交感神経は安静にしているときや
食事をしているなどに活発に働きます。
■ということは、
交感神経の働きが強いと脈が速くなったり、
血圧が高くなったりするのです。
そこで、
この交感神経の働きを抑える、
β遮断薬を飲むと、
血圧を下げたり、
脈拍をゆっくりにしたりできるのです。
■実際、
この薬を内服している患者さんの
脈拍は1分間に50回前後になります。
※脈拍の正常値は、
性別によっても異なりますが、
60〜80回程度とされています。
この薬の効果を利用して、N教授は
記者会見の前にドーピングをしていた
というわけです。
■これはたしかに、
とても理に適った方法だなあ
と当時、私も思いました。
誰でも、緊張する場面はあります。
それを意識的にコントロールするのは、
難しいものです。
こういう短期的なものなら、
薬に頼るのも悪くないでしょう。
■しかし、
いつも薬に頼るわけにもいきません。
その後私は、
もっといい方法を見つけました。
薬に頼らなくても、
脈拍をゆっくりにできる方法です。
■これは誰でもできる簡単な方法です。
いったい、どんな方法か?
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