時々
不意に泣きそうになる

さだむ・・・ お前の事を思いだすと泣きそうになるんだよ






お前は野球部でオレは陸上部
なのに放課後、体育館の裏側でよくプロレスをやったよな
オレのダブルアームスープレックス・・・ お前は投げやすくてさぁ バンバン投げまくったっけ


小さい体でチョコチョコ動く・・・
お前の印象はそんな感じ
野球でもたしかショートだったよな?


生意気でさぁ
小さいケンカもしたな
なのに弟はお前のことを「さだむちゃんは良い人。凄い人格者だ」って言ってたぞ









あの日
お前に何があったのか・・・

迫り来る津波の恐怖に何を思ったのか

まさか同級生のお前にそんな災難がふりかかろうとは、中学の頃には想像も出来なかったよ


石巻とは行っても超ヘキチ
オレらの同級生は高校卒業すると殆どが故郷を離れて行った
家業を継ぐため残ったお前らこそ、本当に故郷を愛してる人間なんだと思う
だから離れたオレが郷土愛を強く言っても到底お前には叶わない
そう思う



消防団で避難誘導してる時に津波が来て飲まれてしまったんだってな
最後まで地域のために行動して何人かを救ってくれたんだってな


ありがとう


オレはお前を誇りに思うよ
お前の同級生だと言う事を誇りに思うよ



先月、瓦礫だらけになったあの一帯を見に行った
見渡す限りの瓦礫・・・ 瓦礫・・・
このどこかでお前が亡くなったんだと思うと、どうしようもない怒りが湧いてきた
それは津波に対してなのか
それとも何も出来ない自分に対してなのか
わからないけど


ただオレはあの瓦礫を見て誓ったんだ
「これからの人生 子供達のために 次の世代のために生きよう」と


本気だよ


オレ達の世代ってさ、一番贅沢して来た世代じゃん?
物は豊富にあり高度成長とバブルまで経験してきた
やっぱさ、その分のツケが回って来たのかな?
恐らく、これからとんでもない苦労をしなきゃいけない時代になると思うんだ
でも良い思いして来たんだから、その分やらないとな
特にオレらのような働き盛りがさ


さだむ・・・
四十九日を過ぎたから、お前はもう向うの世界にいっちまったんだよな?
なら見ててくれ
これから日本は生まれ変わるよ
前よりもっと精神的に豊かな国に・・・

絶対やってやるよ
それが
生き残ったオレが故郷のためにやれることだと思ってる
そして孫に苦労話を自慢げに話てやるんだ(笑)



たださ


お前を思い出して

想像しては


また泣いて


これずっと治らねぇよ






さだむ・・・
お父さんには会ったかい?
敏広は近くにいるかい?


オレの親父は・・・ 飲んでるかな?




しばらく会えないけど
会ったらまたプロレスごっこしようぜ


さだむ・・・


ありがとう


またな