一郎が生まれたとき、放し飼いの犬のサブロウは嬉しく庭を吠え回った。妻のそばに正座をして黙って座っていた、すでに年のいった父親は声を上げずに大きく何度もうなずいた。


「一郎って名前だ」

父はつぶやいた。汗だくになっていた妻は笑みを浮かべた。