今日は祖父の祥月命日だった
といっても私に祖父の記憶はない
ちなみに母方の祖父もまた
私が生まれる前に亡くなったので
見たのは写真だけである
祖父が亡くなったのは
私が1歳のころだったという
以下は亡き祖母と母の証言である
祖父は北洋の大きな船の機関長だった
1年の半分は海にいて
残りの半分は家・ではなくて
その給料のほとんどを家に入れず
飲み歩いていたような人だった
それでも晩年病気をして
寝たきりになって
もう声を発することもなくて
そんな時に私が生まれた
赤ん坊の私を抱いて
じっと見てニコニコしていたけど
やっぱり何も言わない
だから母は嫁いできてから一度も
祖父の声を聴いたことがなかった
それから半世紀上の時が流れても
仏間にあるその写真以外に
まったく知らない祖父の記憶
そういえば父からはまったく
祖父の話を聞いたことがない
祖父の代わりに家計を支えてきた父は
さまざまな思いがあったのだろう
と勝手に思う
もうここに出てきただれもが
この世に存在しないのだから
祥月命日の今日くらいは
記憶のない祖父の話でも
しておきますか