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家を出る。
ウェストパークへ足を踏み入れる。
セミや虫たちの声がかまびすしい。
秋。

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公園を歩く。
蝉(せみ)しぐれ。

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蝉しぐれ。
俳句の季語で使われる場合、「追想」「後悔」といった思いを乗せられることが多いかと。

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蝉しぐれ。
取り返しのつかないことを激しく知らせるというメタファ。
新たな後悔が消えゆく後悔を追うフーガ。
激しい脈動。

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夏の終わりに森に入っちゃだめ。
湖畔を散歩しちゃだめ。
公園を横切るのにも覚悟がいるよ。

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蝉しぐれが知らせてくる。

「手遅れだ」

一歩踏み出すと、背後の戻り道も一歩消える。

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戻り道はない。
前へ前へと蝉しぐれ。