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いま
家具という家具を柔らかなものにかえる
狂気のごときものがあればきみは 癒える

~山本哲也「家具について」~

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三十年前に読んだこの詩を覚えている。

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この詩を読んで、自分の視力、モノを見る眼の力について思いを巡らせた記憶がある。
十九歳になったばかりの頃だった。
当時の僕には、視力に関する問題は大きな問題だった。

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十八歳から十九歳にかけての時期は、筋肉が盛り上がっていくように視力が高まっていくのを肉体的な感覚であるかのように実感できた。

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十九歳の僕は思ったものだ。

-僕は、あなたに呪文をかける。あなたは眠る。あなたは忘れる。あなたが僕であったことを。

そう書いた。

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その通りになった。
僕は、彼であったことを忘れた。

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しかし、十九歳の僕は、未来の僕に向けて、最後にこう書いた。

-あなたは思い出すだろう。「俺は、おまえだった・・・」