相変わらず冬営地の周辺では、狼による家畜被害が頻繁に出ているとのこと。

どうも、今年の冬はかなり厳しい寒さになるような気がします。
というのも、狼が例年より早く発情期を迎えて大きな群を作っている、という話を、私たちの冬営地だけでなく、モンゴル各地で聞かれるからです。

冬営地のすぐそばで、夜、足かせをつけたまま放牧していた馬が襲われた、とか、羊の群が食い散らかされていた、という話もきき、気が気でありません。

モンゴルでは馬は夜に放牧して太らせるのだそうです。
夏の話だけでなく、冬でも、馬の群は屋外で放し飼い。
あまりに狼被害がひどいときなどは、馬の群を囲いに入れたりするそうですが、1、2頭の乗用馬だけ、という場合には、囲いの中に入れてもあまり狼対策にならないばかりか、逆に逃げ場を失ってしまうのです。
雪が深くなってくると、家畜の放牧はオートバイなどは使えません。歩きか馬で追うことになるのです。
歩いていれば寒くはない、というものの、一日中羊とヤギを歩かせているわけにはいかず、1-2時間ごとにじっくり羊やヤギが草を食み、反芻、消化をして、栄養を蓄えることができるように一定の場所にとどまる必要があります。

だから、冬は羊やヤギの放牧地もベースキャンプとなるゲルの近くを転々とすることになります。
羊やヤギの群が落ち着いて草を食べ始めたら、放牧させている人もゲルに戻って暖をとり、お茶を飲んだり、腹ごしらえをします。

家畜を狙う狼たちは、こういう無人になった群を昼間に襲う、ということもあり、こうなってくると、もはや追っ払う、だけではきりがないので、何人かでチームを組んでの狼狩りをしなければいけません。

前回、ガナー君の兄弟が狩りに行ったときは、土地勘がない人たちばかりで追い立てたため、せっかく追い出した大きな狼3ー4頭をしとめることができなかったのでした。

今週末は幸い、ガナー君をドライバーとして動員する必要はなくなったようなので、昨日の午後からシェパードのソートンと一緒に冬営地に意気揚々と出かけていきました。

狩りは本日、兄弟や彼らの仲間など10人弱ぐらいが集まり、日中にやるようです。
どうも冬営地の北側の谷間の藪に狼の巣があるらしい、ということなのです。
ライフル銃は5-6丁、残りは勢子として歩いて爆竹などを鳴らしながら、狼を藪から追い出し、ライフル銃を構えて狙う人たちの場所まで誘導するという昔ながらの作戦でいく、と言ってました。

平坦なところや雪が少ない場合などは、そのままジープなどで追い回し、狼がへとへとに疲れて歩けなくなったところをしとめる、という人間有利で伝統的な狩猟やその狩人たちの生き様などをきいてきている私としては、「卑怯」な気もする方法が一般的なようですが、冬営地のすぐ近くは、起伏の激しい谷間が多く、また藪や深い溝などがここかしこにあるので、伝統的なまき狩りをやることになりました。

ガナー君がハンターの待機位置と勢子のルートを決め、私が持ってきたトランシーバーを使って指示を出すようです。

前回は、トランシーバーがなく、勢子の連携がうまくいかず、別ルートを追い立ててしまい、なんと、私たちの羊やヤギを、インフルエンザ休校で授業がなくなったティーンエイジャーの甥っ子たちが放牧している目の前に3-4頭の狼が突っ込んでくる、というビックリ仰天なハプニングがあったそうです。
狼たちも追い立てられてパニックだったようで、甥っ子や羊たちには目もくれず、一目散に口からよだれを撒き散らしながら走っていた、とのこと。

しとめられなかったとしても、いったんこういうまき狩りをすると、大体3-5日間くらいは、狼の方も警戒してよってこない、という話ですが、そうそう狼狩りを企画するのも大変だから、なんとか今回、大物をしっかりやっつけてきてほしいです。