昨年の第17回チャイコフスキー国際コンクールで、一次からファイナルまで全日程同じ席に座って聴いていた、ドミトリー・オニシェンコ。

一流演奏家ならではの鋭い視点と、かつて自身もそのステージに立ち闘ったーー同じ立場にいた先輩として、後輩ら(コンテスタント)への愛と激励に満ちた長文批評を毎日テレグラム(ロシアで浸透しているSNS)で発信していました。

そう、彼自身がチャイコンの入賞者なのです。2002年の第12回大会で5位、当時弱冠19歳でした。

(2002年の月刊ショパンより↓ 10代のあどけなさが残っていて、かわいい!)

 

その批評読みたさにオニシェンコ氏のテレグラムをフォローしてから、今でもたびたび投稿を見ています。

昨日は、来週モスクワで開催されるコンサートのチラシが投稿されていました。

 

「巡礼の年」というテーマのもとに小品を集めたコンサートのようです。

第1曲目には、イギリスのヘンリー・パーセル(Henry Purcell  1659-1695)作曲の「グラウンド」。

現在、バッハ、スカルラッティ、ラモー以外のバロック作品をモダンピアノで弾くことはかなり「珍しい」と思います(イギリスでは、ウィリアム・バードの作品をピアノで弾くのが人気と聞いたことはありますが)。

しかしこのパーセルのグラウンド、ロシア系(=ロシア人、ロシアの教育を受けた人)ピアニストのプログラムではよく見る気がします。

私もこの曲が好きで、モスクワと名古屋両方のリサイタルで弾いたことがあります。

特に名古屋では、子供から大人まで「なんかあれが一番良かった!ポップスみたいに病みつきになるメロディー」と好評でした。

 

今日の記事では、このパーセル作曲「グラウンド」のおすすめ動画をいくつかシェアしておきます。

好きなテンポ感、アーティキュレーションの演奏を見つけてみてください。

 

①ヴァン・クライヴァーン、仙台等数々の有名コンクール覇者のヴァディム・ホロデンコ

 

②クリーヴランド国際2016年覇者のニキータ・ムンドヤンツ。優雅でデリカシーがある演奏家、という感じ。

 

③昨年のチャイコン他、色々な国際コンクールに出ているエラマン・エルヌール。他の奏者に比べ速めのテンポで抜群のビート感です。それでいて各フレーズに細かな表情があるのはすごい。

 

④アントン・バタゴフの演奏には一番感銘を受けたかもしれません。前奏付き。同じモティーフが繰り返される音楽においてあえて終止音を弾かない不意打ちにドッキリ、「今私たちが見ているものはやがて過去のものとなっていく」というような普遍的かつ哲学的なメッセージを感じます。