ストリームサーキュレーション

2021年制作 h42.5xw49.5xd19.5cm

 

 ストリーム系3作目、後ろの輪っかはLEDの蛍光灯。

 次回はシュモクザメの水中バイクに乗っているものを制作予定。

 

 添付のキリコ、パース効き過ぎの建物の隣、煙突の根本に二人の人物がいるのをぎりぎりで確認できると思う。

 「この二人は何かを話していて、その内容を自分が知ることは決してない。」  

 作品タイトルも「大いなる謎」だったと思うが、人かどうかも定かではないのに、会話をしている確信だけはあり、この遥かな距離が自分を謎のままに置く。

 キリコのお家芸ともいえるこの表現、それまでのアカデミズムでは扱わなかった遠近法の陥穽というか、サブリミナルトキシンというか・・・。

 似たような展開でバルテュスの風景画がある。

 スイスの広大な山岳でピクニックを楽しむ一家。

 遥かなたの尾根にも人物がいて、分解能ぎりぎり手前、家族なのが判る。

 これものどかな休日とは思えない不安さを孕んでいる。

 「何かが道をやってくる」というブラッドベリイの短編がある。やってくるのが決していいものではないという妙な確信が、これもタイトルだけで判る。

 彼我の距離。その不安は、自分の巣やテリトリーより遥かに遠いところや時代に想像力が及んでしまった人類の宿痾といえるだろう。