「迷宮号」逆サイド

 

 通常美術は感情に訴えるもので、絵描きが言葉で補足したら絵描きの負けともいえるのだが、本作は言葉がとても多い。

 資本主義サイドと旧共産圏、先進国と新興国、板挟みの国連、兵器ビジネスにタックスヘイブン、ブリグジット。今日地球上で起こっている色々な(大体はろくでもない)事実をパズルの様に組み合わせている。

 プーチンの亡命ルートやブッダアイ、対面に"watching you"のビッグブラザー。

 補足として情報量大量のエスキースも併せて展示した。

 エスキースとセットで一作品と言えない事もない。

 宗教美術には強い物語性があって、説話を知らない異教徒には解らないものだが、そのイコンに触れる殆どの者が教義を知っている場合、物語性にも寛容だ。

 環境問題を始め、今日の地球上の問題は全ての人類、更には地球上の生き物全体の共有する問題であろう。

 美術作品における文学性の是非より、我々の物語の結末を何とかましな方に向かわせる方が遥に大切なことだ。 

 

 ボッシュの作品でも有名な「愚者の船」。

 愚者の島ナラゴニアを目指す阿呆船「ダス・ナレンシフ」。

 出版された15世紀から、タヒチを目指したゴーギャンから、同じ問いかけがなされている。

 「我々は何処から来たか、我々は何者か、我々は何処に行くのか?」