呪いのブレスレット44 | HAPPY DAY

HAPPY DAY

☆ベリーズ文庫(現代・ラブファンタジー・異世界レーベル)マカロン文庫・コミックベリーズ・マーマレード文庫・マーマレードコミックス・LUNA文庫・夢中文庫・ネット文庫星の砂にて執筆させていただいています。

「小杉だね」

「翔平、小杉があそこにいるよ?」

翔平は小杉をちらりと見る。

「もう新しい彼女か」

亡くなった岸谷まどかさんは小杉の彼女だった。

亡くなってからまだ2ヶ月経っていない。

翔平のあきれたような声。

「あの女の子、誰だろうね?」

浴衣を着て髪をアップにしている女の子に、みのりはわからないようだけど、あたしはすぐにわかった。

「彼女、3年のサッカー部のマネージャーだよ」

教えると、そう言えば見たことあると、一同が頷く。

「亜美はなんで彼女を知っているの?」

「この間、一緒にいるところを学校で見かけたから」

「そうなんだ。しかし、小杉の彼女って年上ばかりじゃない?」

そこへ大きな音と共に大輪の花火が上がり、会話が途切れた。

 

花火大会が終わり、今までいたたくさんの人はしだいに減っていく。

あたしたちは今行っても混んでいるだけだからと、その場に残って話をしていた。

「あれ? 亜美っ」

その声に顔を向けると、玲奈がいた。

その隣には大学生っぽい雰囲気の男子がいる。

「玲奈も来ていたんだ」

「うん。来るつもりはなかったんだけどね。兄貴が行こうって。あ、紹介するね。3つ上の大学生で、兄の拓磨よ」

細身で背の高いメガネをかけたお兄さんだ。

お兄さんはあたしたちに軽く頭を下げる。

シルバーフレームの向こうの瞳は黒曜石のように黒く、なんだか怖いと思ってしまった。

「君が亜美ちゃん? 妹がお世話になっています」

「こ、こちらこそ」

そうだ、翔平が言っていた玲奈の霊感があるお兄さんだ。

瞳の奥でなにかを見ているような、そんな瞳であたしを見ていた拓磨さんはフッと顔を緩ませる。
 

「なにかあったら、妹に連絡を取るように言って」

「えっ……?」

「なにもないといいね」

この人はあたしのことをお見通しなのだろうか。

ここには翔平たちもいるのに、あたしだけしか拓磨さんは見ていない気がする。

「失礼」

拓磨さんはそう言うと、あたしの両肩をポンポンと叩いた。

その途端、スッと身体が軽くなった気が。

「ぁ……」

「水には近づかない方がいいよ。じゃあ」

「え?」

拓磨さんは微笑むと、歩き出した。

「亜美、またね!」

玲奈は他の友達にも手をあげて挨拶して、お兄さんの後を追った。

 

image