「香澄ちゃんと遼平さん、どうして知り合ったの?」
疑問がたくさんある。
「何回かカットしに行ってるし、遼平さんが担当してくれているの」
髪の施術をしてもらっているうちに好きになったらしい。
お互いの家も近い事からばったり会ってそれから数回気軽にお茶を飲んだりしていたのだ。
そして数日前に遼平が付き合って欲しいと告白した。
歩きながら話を聞いた杏梨は相槌を打ちつつ前を歩く背の高い2人を見た。
「杏梨をビックリさせようと思って黙っていたけど、その時になるとダメだねー 恥ずかしくて顔なんか上げられなかったよ」
香澄の顔は暗がりでも分かるほどまだ赤い。
照れた顔を見るのは珍しくて可愛いと杏梨は微笑む。
「なんだか変だなーって思ってたんだ ゆきちゃんがくれば紹介するって言うし、気が合わなかったら気まずいだろうし・・・・・・ってね でもこれで納得ー♪遼平さんなら大丈夫なわけだね」
「そうなの♪ほんとは言いたかったんだよ?」
河川敷に出ると座るところがないくらい混雑していた。
「すごい人・・・・・・」
色々な形をした花火が宙を彩り、皆は楽しそうに上を見ている。
座れるスペースを見つけた4人は香澄が持って来た敷物の上に座った。
杏梨と香澄をはさむようにして雪哉と遼平が座る。
座った遼平の手が香澄の腰に回るのを目にした杏梨は隣に座っている雪哉を見た。
「どうした?」
「えっ?ううん ゆきちゃん、手貸して」
黙ったまま手を差し出されると杏梨はその手を握った。
香澄と遼平を見ていたら甘えたくなったのだ。
「ありがと」
雪哉を見て微笑を浮かべた。
「どういたしまして」
雪哉は顔を近づけるとこめかみに軽くキスを落とした。
* * * * * *
花火大会は華やかに終幕し、駅に向かってぞろぞろと人の波が動く。
歩いていると斜め横を行く男を見て杏梨はハッとなった。
あの男の人・・・・・・?
階段でぶつかった男に似ている。
杏梨は男の顔をよく見ようと近づいた。
「あっ!杏梨っ!?」
香澄が呼び止めたが杏梨の姿が混雑した人ごみに消された。
「雪哉さんっ!杏梨が離れちゃったんです!」
香澄が前を歩く雪哉の腕を掴んだ。
続く