「ゆきちゃん、あさっての夜に花火大会があるんだけれど一緒に行ける?」
「ん?あさっての夜?」
手元の分厚いスケジュール帳を開く。
人の手帳を見るのは失礼だからじっくりとは見ないが、ちらっとびっしり書かれた文字が見えた。
「花火大会は何時から?」
「えーっと7時から」
「30分遅れてもいいかな?」
やっぱり予定が入っているらしい。
「30分でいいの?大丈夫?お仕事があるんならいいよ?」
香澄ちゃんの彼氏が見られなくなるのは残念だけどお仕事なら仕方ない。
「大丈夫、30分で問題ないよ」
雪哉はスケジュール帳に「花火大会 杏梨」と書き込んだ。
「ほんとにほんと?」
「用心深いな?何かあるの?」
顔を覗き込んで聞く杏梨に苦笑いを浮かべる。
「あのね?香澄ちゃんも一緒なの」
「そう 女の子2人では危ないからちょうどいい」
「ゆきちゃんも行かれれば香澄ちゃんも彼氏を連れてくるって言うの」
「ふ~ん、香澄ちゃんに彼氏がいるのか」
きれいな子だからいても不思議じゃない。
「わたしもさっき聞いたばかりで誰だか教えてくれないの ゆきちゃんがくれば彼氏も連れてくるって なんだか変だよね?どうしてゆきちゃんなんだろう・・・・・・」
考えればおかしな話だ。
雪哉が香澄の彼氏と気が合わなければ花火大会はつまらないものになってしまうだろう。
小首をかしげる杏梨を雪哉は引き寄せた。
「明後日になればわかるよ 頭を悩ませる必要はない」
軽く尖らせた唇にキスを落とす。
「さあ、入浴タイムだ」
続く