まったくあの子がいつもちやほやされている事に腹が立つ!
本当ににくったらしい子だわ!
琴美が店を出たのは杏梨が遼平に髪を施術してもらっている頃。
横目で見ながら他のスタッフに挨拶をし、店を出た。
「ヘアーモデルですって?ほんと、バカらしい」
大通りを歩きながらバッグの中から携帯電話をごそごそと探す。
目当ての物はなかなか手に当たらない。
更に苛立つ。
やっと指先が携帯電話に触れて取り出した。
~~~~♪
『琴美~ なんだ早いな?』
かけた相手はすぐに出た。
あきらだ。
「出てきてよ 飲みたいの」
声は明らかに不機嫌であきらはやれやれと思った。
『わかったよ 店の近くまで行くよ』
「だめよ!店の近くはだめ!途中で会いましょう」
店の近くで会うのは危険だ。
杏梨とあきらが万が一会いでもしたら計画が水の泡となる。
『意外と小心(しょうしん)なんだな』
電話の向こうでげらげら笑う声。
更に琴美は苛立ち、携帯電話を投げつけたくるのを我慢し、待ち合わせの場所を指定して琴美は電話を切った。
* * * * * *
遼平が雪哉を呼びに行った。
オフィスのドアを叩くと近くにいたのかすぐにドアが内側から開いた。
「仕上がった?」
「はい!」
嬉しそうな顔を見れば納得が行く出来栄えだったに違いないと雪哉は思った。
「杏梨を疲れさせなかっただろうね?」
「えっ・・・・・・」
まさかそんな言葉が聞かされるとは思っていなかった遼平は一瞬で真顔になる。
「た、たぶん・・・・・・」
「OK 見に行こう」
雪哉さん、出来栄えの心配ではなく杏梨ちゃんの心配ですか・・・・・・。
先に階段を降りていく雪哉の後姿を見ながら小さくため息を吐いた遼平だった。
「杏梨」
1人でイスに座っていた杏梨に声をかけるとハッと顔を上げた。
鏡の中の杏梨と目が合う。
「ゆきちゃん」
はにかんだ笑みを浮かべる。
なんとも愛らしい表情に後から来た遼平も見入ってしまった。
しかもさっきまで無表情だった雪哉さんがとろける様な笑顔だ。
はあ~ やってらんねぇ・・・・・・。
内心、2人が羨ましい。
まあ・・・・・昔から杏梨ちゃんには甘い雪哉さんだったから仕方ないか。
遼平はしばらく雪哉と杏梨の会話に邪魔をしないように離れて見ていた。
続く