「Love Step」(252) | HAPPY DAY

HAPPY DAY

☆ベリーズ文庫(現代・ラブファンタジー・異世界レーベル)マカロン文庫・コミックベリーズ・マーマレード文庫・マーマレードコミックス・LUNA文庫・夢中文庫・ネット文庫星の砂にて執筆させていただいています。

「ゆきちゃん!ひどいよ!」



ネイルサロンを出てからさっさと行ってしまう雪哉の背中に杏梨は言った。



雪哉の足が止まり振り向く。



「何がひどいんだい?」



振り向いた顔は不機嫌そうだ。



一瞬杏梨はひるみそうになった。



「だって、病院の予約は1時間後なのに琴美さんのところでお茶させてくれないし、病院の予約だって言ってくれてなかったし」



「病院の予約はここへ来てから取ったんだ 一昨日、のぼせて倒れただろう?気になっていたんだ」



「・・・・・・」



店に来てから予約したのであれば無理もない。



「コーヒーが飲みたいのなら向こうで飲めばいい さあ、行こう」



杏梨はそれでも納得がいかず唇を尖らせた。



それを見て雪哉の顔がほころぶ。



「そんな唇をしているとキスするよ?」



「なん!もうっ!こんなところでっ!そんなこと出来るわけないでしょっ!」



全身の血が顔に集まったみたいに熱くなる。



手でパタパタ顔を仰いでいると、



「雪哉さん」



ゆきちゃんは遼平さんに声をかけられて隅の方へ連れて行かれる。



遼平さんは慌てている様子で一気に話している。



ゆきちゃんが片手を額に置いて小さく首を振った。



なんかあったのかな・・・・・・。

わたしの名前が出たような・・・・・・?




少し離れて見ていると遼平さんと目があった。



「お願いします!モデルの子がイメージに合わないんです!」



遼平が拝むように顔の前で両手を合わせる。



「遼平、素人の杏梨にカットモデルをやらせるのは無理だよ」



雑誌社から派遣されたモデルが髪を切りたくないとごねて遼平は困っていた。



今夜、店が終わったら撮影の予定なのだ。



そこへめぐみもやって来た。



「あのモデル失礼しちゃうわ!そういう契約なのに」



杏梨はめぐみの怒った顔を見てあっけに取られた。



人前で憤慨しているめぐみを見るのは初めてだ。



「雪哉さん、あの子はプロ意識にかけています そんな子を使ってもうちのイメージダウンですよ?」



めぐみのそこまで言われて雪哉も考えないわけにはいかない。



「他のモデルは?」



「今日の今日で誰が来てくれるか・・・・・・」



めぐみが両腕を前で組んで疲れたようにかぶりを振る。



「もちろんモデルで店のイメージにかかわる事だが・・・・・・杏梨では役不足だよ」



ど素人の杏梨がカメラを向けられて自然と笑えるかと言ったら無理だろう。



「杏梨ちゃんは俺が描いていたモデルそのものなんですよ 上半身しか撮らないから問題ないです」



遼平はなおも食い下がる。




「・・・・・・分かった 杏梨に聞いてみよう」




* * * * * *




「む、無理・・・無理です!遼平さん!いくらなんでも無理です!」



雪哉に呼ばれ話を聞いた杏梨は、びっくりして大きく首を横に振りながら後ずさりをする。



「杏梨ちゃん!お願いだよ!俺を、いや、店を助けると思ってお願いだよ!」



店を助ける・・・・・・。



各美容店が参加するヘアーカタログの雑誌なので失敗するわけには行かない。



第2の雪哉として売り出している遼平だ。



お客様に是非やってもらいたいと思わせなくてはならない。



「・・・・・・わたしに出来るかな・・・?」



今からではイメージどおりのモデルが見つからない。

遼平さんはわたしがイメージどおりだと言う・・・・・・。

必要とされているのならやろうと思った。

ちゃんとできるかどうか不安はいっぱいだったけれど。



「わぁお!!!ありがとう!杏梨ちゃん!」



遼平は飛び上がって子供のように喜んだ。




続く



ペタしてね