「Love Step」(169) | HAPPY DAY

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☆ベリーズ文庫(現代・ラブファンタジー・異世界レーベル)マカロン文庫・コミックベリーズ・マーマレード文庫・マーマレードコミックス・LUNA文庫・夢中文庫・ネット文庫星の砂にて執筆させていただいています。

「それ見せてくださいっ!」


めぐみが持っている雑誌をひったくるように取ると裏にひっくり返し、出版社を見る。


月光ジャーナル編集部



「そんな・・・」


昨日バッグの中に見つけた名刺。


みんなに聞こうと思ってバッグの中にまだ入っている。


杏梨はロッカーの中からバッグを出して名刺を探した。


「杏梨ちゃん?」


背後から心配そうなめぐみ。


「これ・・・」


「?」


杏梨の持っている名刺を覗き込む。


「これは・・・この雑誌の出版社の名刺よね?」


「・・・そうみたいです」


事実だから否定は出来ない。


「杏梨ちゃんが記者に言ったの?だから彩さんは怒っているの?」


怒りを通り越して、失神しそうに見えた。


杏梨はぶるぶると首を横に振った。


「あ!」


もしかしたら・・・

具合が悪くなった日、ゆきちゃんはわたしが誰かと話していたと言っていた。

あの日の記憶はすっぽり抜け落ちているけれど・・・わたしは・・・この人と・・会ったの?


「杏梨ちゃん?」


杏梨の顔がみるみるうちに青ざめていく。


「大丈夫?座った方が良いわ」


「めぐみさん・・・」


「その様子だと記者に言ったのね?」


「・・・わからないんです」 


強く否定したかったが出来なかった。

あの時は具合が悪すぎて記憶がないのだから。

お店を出て・・・気づいたらマンションのベッドに寝ていた。


「正直に言った方がいいわ 記者にしつこく聞かれたんでしょう?」


「めぐみさんっ!」


信じてもらえず杏梨は声を上げた。



* * * * * *



ソファーに座らせると彩のためにコーヒーを入れた。


「ゆっくり飲んで」


湯気のたったカップを彩の前に置く。


「いったいどうしたんだい?」


「・・・雪哉さん・・・私・・・もう女優をやっていけない・・・」


そう言うと両手で顔を覆い、再び泣き出した。


「それだけでは分からない ちゃんと説明して?」


目の前にいる彩より、杏梨を心配していた。


彼女の気持ちが治まるまでここに居てもらうが、気がかりなのは杏梨だった。


「先日の、杏梨ちゃんの事故・・・誰にも言わないでって・・・」


「もちろん、杏梨も俺も誰にも言っていない」


「雪哉さんじゃないんです!杏梨ちゃんが・・・杏梨ちゃんが記者に言ってしまったんです!だから記事に・・・優しいのは見せかけの酷い女優って・・・」


「なんだって!?」


そんなばかな・・・杏梨が言うはずがない。


その時、大きな黒いカバンを肩から提げた女性を思い出した。


あの女性が記者?

杏梨は知らないと言っていた・・・。

本当に分からないようだった。

きっと勧誘だったのだろう。


続く


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