わたし、何かしちゃったの・・・?
「雪哉さんっ!」
階段を降りてくる雪哉に彩は瞳を潤ませながら駆け寄った。
雪哉が1階のフロアーに降り立つと彩は泣きながら抱き付いた。
抱きつかれた雪哉はなぜ彩が泣いているのか分からない。
「どうしたんだい?」
「雪哉さぁん!」
彩が雪哉の胸で泣きじゃくる。
雪哉に抱きつく彩を杏梨は呆然と見ていた。
彩さん・・・。
何も言えずに2人を見ていると、冷やしたタオルを持ってきてくれたスタッフが頬にあててくれた。
どうして頬が赤いんだ?
雪哉の意識が杏梨に向いたのが分かった彩は体重を雪哉の方にもたせかけた。
周りから見れば彩の行動は貧血を起こしたように見えた。
「大丈夫?階段登れるかい?とにかくオフィスへ行こう」
階段を上がるように促した。
しかし、全身が小刻みに震えている彩はなかなか上がれない。
雪哉は彩の腰に腕を回すと、2階へ上がった。
「わ、わたしも2階へ行ってきます!」
追いかけようとすると、めぐみに腕を掴まれた。
「ちょっと、杏梨ちゃん!雪哉さんに任せた方がいいわ 彩さんはあの通り、興奮しているから それより、頬をもっと冷やさないと」
「・・・わたし、何をしたのか分からないんです・・・」
少し緊張が解けたのか、杏梨の目から涙が溢れ出した。
「休憩室へ行きましょう」
めぐみはポロポロと泣き出した杏梨を休憩室に連れて行った。
イスに座らせ、冷たいタオルを頬にあてる。
「いったい何があったのかしら・・・」
めぐみが深いため息を吐いた。
「めぐみさんっ!」
あの場にいた受付のスタッフが慌てて休憩室にやってきた。
手には彩が杏梨の頬を叩いた雑誌を持っている。
「どうしたの?」
「これを見てください!」
雑誌をめぐみに差し出した。
【優しそうな外見は見せかけ、女優 三木 彩】
「なに・・・これ・・・?」
めぐみが呟くと俯いていた杏梨が顔を上げた。
「・・・どうかしたんですか?」
「彩さんの記事が載っているの・・・ちょっと待って・・・」
彩の記事が載っているページを探し当てためぐみは読み始めた。
「先月、学校へ向かう途中の原付バイクに乗った女子高校生に怪我を負わせた女優、三木 彩 病院に運ばれた女子高校生をマネージャーに任せて仕事に行った・・・」
杏梨の手からするりとタオルが床に落ちた。
「なんで・・・?なんで・・・・」
彩さんの責めた言葉がやっとつながった。
わたしが記者に言ったと思っているんだ・・・。
わたしは言っていない。
その時、ハッと思い出した。
続く