だが、心の片隅で父親の言葉も思い出す。
その言葉を忘れようと荒々しくキスをしながら、雪哉は指を胸から下へと滑らせた。
腹部を通り、布に手をかけた・・・その時、杏梨の身体がビクッと大きく震えた。
「っ!・・・ぃ・・・や・・・!」
今までの杏梨の様子と打って変わった。
瞳が怯えている。
「杏梨?」
布に触れる手が止まった。
「ぃ・・・いや・・だよ!」
雪哉は身体を起こして杏梨を見つめた。
身体が硬直して動けない様子で、目尻から涙がツーッと伝わりシーツを濡らしていく。
「ぃ・・・や・・・・・・だ・・・」
やっと動かした片手であらわな胸を隠す。
「杏梨、お前の嫌がる事はしないから泣かないで」
雪哉ははだけたキャミソールを元に戻し、パジャマのボタンをかけてやる。
「ご・・・・ご・・ごめんなさい やっぱ・・り・・・でき・・ない」
両手で顔を覆って泣きじゃくる。
発作とまでは行かないようだが、あの時の感触を思い出してしまったようだった。
「大丈夫だ 何もしないよ」
杏梨の身体を抱き寄せ、背中を静かに擦る。
「ごっ・・・ごめんなさい・・・うっ・・・き、きらいに・・・ならない・・で・・・」
涙が止めどなく出てきて杏梨は子供のように激しく泣いた。
「杏梨、俺が悪かったんだ お前を嫌いになるわけがないじゃないか 気にする事はないんだ」
俺の声も聞こえないほど泣きじゃくる姿に胸が痛い。
背中を擦って数十分後、やっと落ち着いてきた様子に雪哉はホッとした。
その間、身体の水分が無くなるのでは?と思われるほど泣いた。
キスして・・・って自分から頼んだのに・・・だんだんと怖くなっていった。
大好きなゆきちゃんにならその先も絶対に大丈夫だって思ったのに・・・。
自分から求めたのに・・・。
ゆきちゃんの手がお腹に移動した時、言いようも無い恐怖心がこみ上げて来た。
わたし・・・ゆきちゃんに何を言っちゃったんだろう!?
何を言ったのかあの時、無我夢中で杏梨は覚えていなかった。
気がつくと、ゆきちゃんの腕の中にいて優しく背中を撫でられていた。
治ったと思ったのに・・・簡単にはあの出来事を忘れられない・・・。
気持ちではゆきちゃんの心も身体も・・・欲しかったのに・・・
身体が・・・拒絶した。
杏梨は自分が情けなくなって再び涙が溢れ出した。
続く