それを見た途端に泣きそうな顔になる。
「大丈夫だよ」
「・・・」
すごく後悔している杏梨を見て雪哉は思いついた。
「そうだ、杏梨 出来上がるまで見ないことにしないか?」
「・・・見ないこと?」
「そう、鏡に布をかけて見えなくしよう」
「ゆきちゃん・・・うん・・こんな自分を見るのは嫌・・・」
杏梨の同意を得て雪哉は隣の部屋から大きな白い布を持ってくると鏡に被せた。
これで杏梨の姿が見えなくなった。
「ちょっと待ってて」
雪哉が再び出て行き、戻ってくると雑誌を数冊手にしていた。
「これでも読んでいて かなり時間がかかるから」
渡されたのはファッション雑誌。
今までの杏梨とは縁のないものだった。
杏梨は受け取ってパラパラめくり始めた。
めくっていくうちに可愛いモデルさんを見つけた。
この人の髪型すてきだな。
ページの下の方に雪哉の名前を見つけた。
本名は冬木 雪哉なのだがヘアーアーティストの時は雪哉で通っている。芸名みたいなものだ。
すごいな~ ゆきちゃん
何気なくページをめくっていると三木 彩の特集記事が載っていた。
彼女はモデル出身の女優だ。
女子高生に絶大な人気がある。
やっぱりきれいな人だな・・・あれ・・・?
写真には彩ともう一人男性が写っている。
仲良さそうにオープンカフェのテーブルで隣り合って座っているのは杏梨に泥水をかけた張本人。
あの人もモデルだったんだ。
2人は姉弟らしいけどあまり似ていない気がする。
雪哉は杏梨の髪に施術を施しながらも杏梨の様子を時折見ていた。
ファッション雑誌は杏梨の興味を引かないらしくほとんど見ないで早いスピードでめくっていく。
だがその手が止まった事に気づいた。
彩と峻くんの記事か・・・。
しばらく見ていた杏梨はまたページをめくり始めた。
* * * * * *
そしてかなりの時間が経ち、終わる頃には杏梨はうとうとしていた。
「杏梨、出来たよ」
その声にハッと目が覚める。
「えっ?」
キョロキョロしてここが雪哉の店だと言う事を思い出した。
そんな杏梨に雪哉はクスッと笑い、顔をほころばせた。
「終わりましたよ お姫様」
ケープが外された。
続く