杏梨は雪哉が帰ってくるまでに出かけてしまえば良かったと後悔した。
こんな頭、見られたくないのに・・・。
両手で両耳を塞ぐ。
「杏梨、いい加減にしろ 早く顔を見せるんだ」
耳を塞いでいてもゆきちゃんの声が聞こえる。
ゆきちゃんを怒らせたくない、かと言って髪形を見られるのは死ぬほど恥ずかしい。
その時、布団が持ち上げられた。
「きゃっ!」
とっさに布団の上で丸まる。
「・・・杏梨 なぜ帽子をかぶっているんだ?」
家の中にいるのに帽子をかぶっている杏梨。
その姿を見て怪訝そうな顔になる。
「ゆきちゃん!あっちへ行って!」
早く部屋から出て行って欲しい。
「それは出来ない いったいどうしたんだ?」
帽子を取られるのを怖がっているように両手で取られまいと押さえている杏梨に雪哉は困った。
「なんでもないのっ!お願いだから出て行って!」
こんなんじゃ嫌われちゃう・・・。
分かっていても見られたくない。
かたくなな杏梨に困り果てた時、なじみの匂いが雪哉の鼻についた。
「杏梨・・・」
ゆきちゃんが深いため息を吐いたのが聞こえた。
その途端にわたしは悲しくて情けなくて泣いていた。
「杏梨?」
「こ、こんな姿・・・見られたくなのに・・・ため息を吐かれるのはもっと嫌なの・・・」
杏梨は両手で乱暴に帽子を取った。
続く