出入り口に近い大きなガラス窓に雪哉と彩を見たからだ。
目にした途端に杏梨は顔を歪ませた。
杏梨を追いかけて車から出てきた峻が見たのはその時だった。
どうしたんだ?もしかしてどこか痛むとか・・・?
そう言えば足を引きずっていたな。
峻は思わず杏梨に駆け寄っていた。
「おい!大丈夫なのかよ!? どこか痛むのか?」
峻の声に杏梨はビクッと身体を震わせて声のした方を向いた。
すぐそばに今日の事故の原因を作ったあの青年が立っていた。
「きゃーーーーっ!」
次の瞬間、杏梨は頭を抱えてしゃがんでいた。
「杏梨っ!」
店のドアを開けると信じられない事に杏梨が頭を抱えてしゃがんでいた。
雪哉は即座に駆け寄る。
「杏梨、杏梨、俺だ わかるか?」
近づくが杏梨には触れなかった。
近くで声をかけるだけ。
そして杏梨のすぐ横で唖然としている峻に向かって「離れろ!」と言った。
峻は言われるままにすぐに離れ、店から出てきた姉の所へ行った。
訳が分からず頭をぽりぽりかいている。
「・・・杏梨?」
雪哉は限りなく優しい声で杏梨を呼んだ。
ゆきちゃん・・・。
雪哉の声を聞いて杏梨は緊張を解いたが、身体は言う事を聞いてはくれず顔を起こせない。
「峻・・・あの子に何かしたの?」
彩は弟に尋ねた。
「何もしていないよ 声をかけたら突然あんな風に・・・ったくなんなんだよ!」
峻は訳が分からずイラついた。
つい叫ぶとしゃがんだ杏梨が飛び上がるように驚き顔を上げた。
それを見た雪哉が峻を睨む。
緊迫感があたりを包んだ。
「雪哉・・・彼女は大丈夫なの?」
彩の声で緊迫感が解けた。
「彩、峻くん 悪いけど失礼するよ」
杏梨が一人で立ち上がるのを見て言った。
「ゆきちゃん・・・」
「杏梨、帰ろう」
雪哉は杏梨を車に連れて行った。
続く