まだ雨なんだ・・・。
雨だと気分が憂鬱になってしまう。
学校行きたくないな・・・。
トントン
杏梨の部屋のドアがノックされた。
「ゆきちゃん 入って?」
わたしは急いでベッドの上に起き上がった。
まだ眠い目をこすっているとゆきちゃんが姿を見せた。
「おはよう」
「はよ・・・」
まだ眠そうなわたしにゆきちゃんが微笑んだ。
「朝食出来たよ」
一緒に生活するようになってわたしが大体お料理はするけれど、時々ゆきちゃんは作ってくれる。
「あ・・・ごめんね」
枕元の目覚まし時計を見るといつもより30分遅い時間。
寝坊しちゃった。
もそっとベッドから降りて伸びをする。
伸びをする杏梨を見てまるでネコみたいだなと思った。
リビングに入るとまっすぐ杏梨は窓に近づいた。
雨は勢い良く降っている。
「今日も送っていくから」
「いいよ 時間遅らせて電車で行く」
「杏梨、遠慮しないでいいんだ さあ、食べよう」
杏梨は窓際を離れた。
席について大きなカフェオレボウルを手にする。
ゆきちゃんの作ってくれるカフェオレは大好き。
自分ではゆきちゃんほどうまく作れない。
比率を教えて欲しいと言っても「飲みたい時は入れてあげるから」と言ってはぐらかされる。
目の前のスクランブルエッグとほうれん草のバター炒めをトーストの上に置いてパクつく杏梨。
杏梨は小柄なのに良く食べる。
「ゆきちゃん おいしいよ 作ってくれてありがとう」
口にはいった物を飲み込むとにっこり笑う。
「どういたしまして」
すっかりお皿の中身が空になると雪哉は気になった事を口にした。
「髪の毛がハネているよ 直してあげよう」
「本当?直してくれるのっ?」
「そのままじゃあまりにも寝起きですって感じだからね」
「すごいな~ カリスマ美容師のゆきちゃんにやってもらえるなんて♪」
パウダールームの丸いふかふかのイスに杏梨は座って鏡の中の雪哉を見て笑う。
ドライヤーとブラシを持ち杏梨のハネた髪を直していた。
ゆきちゃんがやるとすぐに直る。
わたしがやると10分以上かかるのに。
雪哉は杏梨の髪を直しながら安堵していた。
昨日は怖がらせてしまったが今日は大丈夫そうだ。
「さすが~」
短いながらもきれいにまとまった髪を見て嬉しそうだ。
「当然、これで食べていけるんだからね」
ゆきちゃんは肩をすくめて笑った。
続く