私の部屋はゆきちゃんの寝室の隣。
8畳の部屋に家で使っていたベッドと机が置かれている。
ここのインテリアとは不似合いな家具だ。
カバンを置くとリビングに戻った。
「ゆきちゃん、わ、私お茶入れてくる」
リビングからキッチンに向かう私の後をゆっくりとした足取りでゆきちゃんが付いて来た。
「杏梨、緊張しているの?」
「そ、そんな事ないよ?」
キッチンまで来たけどどこに何があるのか分からない。
何一つ外に出ていないのだ。
シンクは使っていないみたいに綺麗だった。
「お茶の葉はここね、湯飲みはこの棚に入っている」
そう言って杏梨の後ろから棚を開ける。
すぐ後ろに立たれて杏梨の心臓は跳ね上がった。
後ろにいるのはゆきちゃんなんだから大丈夫・・・。
冷や汗が出てきて目の前がチカチカして急いでシステムキッチンの縁につかまった。
「杏梨?」
青ざめた顔の杏梨に雪哉はしまったと言う顔になった。
「だ、大丈夫だよ・・・ゆきちゃんなんだから・・・」
呼吸を整えて目を開ける。
眩暈は治まり振り向くと心配そうな瞳と目が合った。
「これからは気をつけるよ」
最近は怯える姿を目にしていなかったせいで普通に接していた。
ゆきちゃんに嫌な思いさせちゃった・・・。
「・・・ごめんなさい」
「俺の事は気にしなくて良いから 杏梨は休んでて」
そう言うと杏梨は素直にキッチンを離れた。
お茶を入れて杏梨の前のテーブルの上に置く。
ソファーに座った杏梨は泣きそうな顔をしていた。
「ありがと・・・」
その声は聞こえないくらい小さかった。
近づいて抱きしめてやりたい。
しかし抱きしめたならどんな反応をされるのか怖かった。
続く