こうした取り組みが広がってほしいと思います。

 

 

毎日新聞からです。

 

 

ペットに「もしも」の備え 高齢飼い主の万が一 地域がサポート

2021/5/6 18:07(最終更新 5/6 18:07)

 

飼い主の死亡や入院によりペットが行き場を失うことがないように、福岡県古賀市は動物事案を扱う環境課と介護の担当部署が連携して、ペットがいる高齢者宅の飼育環境を把握し、万が一に備えて預け先や引き取り先を飼い主と事前に決めておく取り組みを始めた。社会問題化している多頭飼育などの早期発見にもつながる先進的な取り組みとして注目される。

 

 直接的には関係のない別々の部署が連携をするようになったのは、同市でここ数年、1人暮らしの飼い主の死亡や入院で猫が取り残されるケースが相次いだのがきっかけだ。2017年には60代半ばの独居男性が自宅で死亡し、10匹以上が取り残された。別居する家族は引き取れず、地域住民らが世話をしたり、新たな飼い主を探したりした。70代の独居男性が同じく自宅で死亡した20年のケースでは、男性を担当していたケアマネジャーが残された飼い猫1匹を世話するため男性宅にしばらく通うことになった。

 

ペットの世話を頼めるあてがない高齢者にとって、ペットの存在が入院のネックになることもある。20年には70代の独居女性が脳梗塞(こうそく)になったのに、2匹の飼い猫と餌やりをしている数匹の野良猫が心配で入院を拒んでいた。ケアマネジャーらが「入院中は世話をするから」と説得し、実際に入院中、1日2回訪問して世話を続けた。

 

こうした背景もあり、従来別々に対応することが多かった環境課と、福祉や介護などの相談窓口となる地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、市の動物関係の登録ボランティアが連携して今年3月に始めたのが「ペットと暮らすシニアの備えサポート」制度だ。

 

制度では、環境課が高齢者宅の飼育環境を把握するためのチェックリストを作成。リストには▽ペットの種類や頭数▽健康状態▽かかりつけの動物病院▽急な入院時や最後まで世話ができなくなった場合に預けたり譲渡したりする人が決まっているか――などのチェック項目がある。また、オス・メスの両方がいる▽不妊去勢手術をしていない▽▽過剰に痩せている▽多くの毛玉がある――など、多頭飼育崩壊に陥っていないかや劣悪な飼育環境にないかを早期に発見するための項目も設けた。

 

 ケアマネジャーらは要介護や要支援の高齢者宅を訪問した際、ペットを飼っていれば、リストに沿って聞き取りをする。その上で、ペットの生活環境や健康状態などが心配され、支援が必要と判断すれば環境課に連絡。環境課職員と登録ボランティアが訪問し、預かり先や譲渡先の相談にのったり、世話をしやすい環境作りをサポートしたりする。環境課環境整備係の花田純一さん(26)は「ペットと高齢者が共に生きていくために要介護と要支援の方だけでなく、いずれは多くの高齢者をカバーしたい」と語る。

 認知症などで判断力が衰えた高齢者宅でペットが増えすぎて劣悪な環境に陥るケースは全国的にも少なくない。高齢者とペットの問題に詳しい九州保健福祉大の加藤謙介准教授(45)=社会心理学=は「気付かないうちに世話が難しくなって孤立してしまう高齢者をどうフォローするのかがいま、地域福祉の分野で起きている問題だ。古賀市のようにそうした高齢者をフォローする仕組みを制度化し、各専門職が関わることで選択肢が増える。他の自治体にも参考になる」と話している。