デイリー新潮からです。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190130-00555944-shincho-soci

 

韓国・中国だけでなく日本でも… 議員会館で「反・犬食映画」上映会が開催

1/30(水) 6:31配信

 

韓国・中国だけでなく日本でも… 議員会館で「反・犬食映画」上映会が開催

犬肉業者から救い出された犬たち

 

〈日本は犬肉輸入大国だという事を何故、誰も知らないのか?〉 告知文にこんな刺激的な問いが踊るイベントが、東京・永田町の参議院議員会館で開催される。ドキュメンタリー映画「アジア犬肉紀行」の特別上映会である。主催は、世界愛犬連盟と映像制作会社の合同会社agd-ethics、そしてあの大島九州男・参議院議員――。

 ***

“大島議員”“犬肉”と聞いて、ピンとくるアナタはなかなかの政治通(あるいは食犬文化通)。大島議員は、昨年11月7日の予算委員会で「大臣、韓国で犬肉を食べましたか?」との珍質問を投げかけたことが話題を呼んだ人物である。そのお相手は「レンポウ」の言い間違いで注目を浴びた桜田義孝・五輪担当相だった。

「お友達や有権者の皆さんと韓国に訪問されたこと、ございますよね?」から始まる大島議員の質問を要約すれば「大臣は韓国で“すき焼きのようなもの”を食べた」「その肉が犬肉だったのではないかと“友達”から聞いた」。桜田大臣は犬肉を食べたことはないと否定、みるみるうちに不機嫌になっていく……。実際のその模様は、大島議員のHPならびにYouTube「大島九州男事務所」チャンネル内の動画で確認できる。

 そんな大島議員が主催に名を連ねるくらいだから、上映作は“反・犬肉映画”である。監督はフクシマと動物をテーマにした「Zone 存在しなかった命」「みえない汚染 飯舘村の動物たち」を手がけた北田直俊氏で、上映時間は約2時間。参議院議員会館の会議室を会場に、すでに第1回目が1月28日に行われた。第2回目は30日に予定されており、1日3回上映、一般の方の来場ももちろん可能となっている。

 

元飼い犬が食用に…

「紀行」のタイトルどおり、作中では中国、韓国、そして日本の3つの国を通して、犬肉の文化の“現実”が描かれる。たとえば、中国広西省チワン族自治区の玉林で行われる「犬肉祭」。毎年ひらかれるこの祭りでは1万頭の犬が殺されるといい、犬を救い出す活動を続ける女性をカメラは映し出す。が、取材クルーは犬肉業者に目をつけられ、しまいには保護を名目に、公安警察の監視下に置かれてしまう……。

 中国では、SNSでの拡散をきっかけに集ったボランティアが、犬を屠殺場に運ぶトラックを緊急停止させる出来事が2016年にあったという。“飛ぶものは飛行機以外、四つ足は机と椅子以外食べる”とも揶揄される中国だが、こうした反犬肉活動が、若者らを中心に展開されてもいるのだ。後述の韓国ともども、ポピュラーな食文化ではないことが強調される。

 食用になる犬の中には、もともとペットだった犬もいるという。「飼い犬が盗まれるケースもあるが、経済発展の恩恵で飼い主がマンションに引っ越し、飼いきれなくなって売られる犬もいる」との証言は、中国ならではの事情と言えるかもしれない。

 同様のケースはお隣の韓国でも取り上げられた。取材に応じた「犬肉食堂」の店主は「店の前に犬が捨てられていることがある」。飼い主の意図はいわずもがな、だ。ちなみにこの食堂ではイケスの魚よろしく生きた犬が檻にストックされていて、主人は丁寧にその捌き方をカメラの前でレクチャーして見せる。電気ショックで殺し、マシーンに入れて毛をむしる。そして60度のお湯の中へ入れて調理……。犬を持ち出しての実演ではなく口頭での解説なので安心を。

 驚くべきは、この食堂では“食材”以外にペットとして小型犬が飼育されてもいること。主人いわく娘が可愛がっているそうだが、「食用犬とペットは分けている」「生活があるので、気持ちを切り替えてやっている」そして「犬に限らず、すべての動物は利用する。人間と動物の関係とはそういうものでは?」との主人の発言は、生活に根差したゆえの含蓄ある言葉ではなかろうか。

 作中では、こうしたエピソードとともに、虐待同様の環境で管理される犬の姿や、実際に殺害されるショッキングな映像も収録されている。

 

「日本にはそぐわない」

 そして日本である。さすがに犬の屠殺場や、犬肉が売られる市場が堂々と存在するわけではない。とはいえ、上映会を主催する世界愛犬連盟によれば、犬肉を提供するレストランなどは日本国内に100軒以上存在し、犬肉輸入の検疫数量は平成28年で8トンにも上るそうだ。作中では、新宿駅前などで啓蒙活動を行う男性の姿ほか、“昭和50年くらいまでは食べていた”と証言する高齢者が紹介される。

「台湾とアメリカでは、すでに犬食禁止の法律が施行されています。日本でも2020年の五輪に向けて、こうした取り組みを進めていきたいと考えています。こういう日本国内の犬肉の現状を知らない人はけっこう多い。その啓蒙のために、今回のイベントを主催しました」

 と語るのは、冒頭で紹介した大島議員である。

「韓国でもピョンチャン五輪のとき、国際的なイメージダウンを嫌って、政府がポシンタン(犬肉スープ)屋の看板を下げさせる動きがありました。食文化を否定するわけではありませんが、犬肉は日本にはそぐわないものであると考えています。(犬食文化のある)ベトナムや中国の方たちが、これから移住者として日本に来る。そういう方たちに日本で犬を食べられては困るわけです」

 28日の1回目の上映会に参加した大島議員は、挨拶で次のように述べてもいる。

「“赤肉”と呼ばれ食べられた時代はあったものの、日本には犬食文化はなじまないものであると考えています。台湾や米国と同じように禁止の法律を作るべく、まずは国会議員に知ってもらうため、議員会館での上映会を行いました。今日だけで70~80人の国会議員に、資料を渡しています。桜田大臣への質問でいろんな叩かれ方をしましたが、まずは社会に一石を投じないと……」

 上映会の参加者はどう感じたか。

「犬肉は日本では関係ないものかと思っていたのですが、そうではないというので興味があって観に来ました。犬が可哀想どうこうはさておいて、てっきり他国の食文化を吊し上げる『ザ・コーヴ』(09年公開の反捕鯨映画)みたいな映画かと思ったんです。ところがそうじゃなくて、日本でも食べられていることが紹介されているし、中国韓国でも反対運動があることを見せている。そういう点ではフェアな作品でしたね」(30代男性)

 上映後の質疑応答では、北田監督にこんな質問も飛び出した。――なんで犬肉ばかりを問題にするの? 豚とか牛は? 

「『それ言われると困っちゃう』と言ってましたね。『説明は難しい』と。ただ、ベトナム戦争を描く『プラトーン』を撮ったオリバー・ストーン監督を引き合いに出して、『“なんでベトナムなんだ? なんで第2次世界大戦や湾岸戦争じゃないんだ?”って聞くようなもの』とは言ってましたね。犬肉に興味をもったから選んだんだ、と」(同)

 鯨肉でやんや言われる日本だからこそ、考えてみたい異質な食文化の是非……なんて難しい話はさておき、興味があればぜひ一度ご鑑賞を。先述のとおり30日に上映会が行われるが、現在、海外のコンペに応募中のため劇場公開の予定はないという。北田監督いわく「有志の方による自主上映会の企画等は随時、募集しています」とのことである。

週刊新潮WEB取材班

2019年1月30日 掲載