咽苦しむ原因の唾液を自ら飲み込めるようになると、ベッドで寝ていても咽ることがほとんどなくなりました。

更に痙性が高まることが少なくなったため、股・肩関節の関節拘縮が改善し、おむつ交換時の陰部洗浄・更衣などの介護手順も楽になりました。

当初、症例は脳の両側に重篤な脳梗塞から「すでに意志判断はできない」と診断されていました。シーティングから1年半経つと、症例は実母やその周りの奥様が言う愚痴、ラジオCMに「ぷぅっ----」と笑って(fig23-1)みたり,悲しい話には涙をこぼしたり喜怒哀楽が見られるまでになりました。

 

〈fig23-1 冗談を言うと笑ってくれるようになりました〉

症例は若いお父さんでしたので、小学生の息子達が居ました。彼らは、週末のお見舞いには、お父さんを車椅子に乗せてちょっと広いホールで走って驚かすなど一緒に遊んでいました。その時は、とてもすがすがしい表情をしていました。

脳梗塞を発症してから3年、症例は屋外に出たことがありませんでした。その夏は、家族みんなで病院の夏祭りに参加して子ども達とにぎやかな雰囲気を楽しむことができました(fig23-2)。

 

〈fig23-2 親子水入らず 楽しいひと時を楽しめました〉

その後この体験をした病棟スタッフは、どんなに重度の障害を持っていても、ケアの一環としてベッドから離床することの重要性を学びました。ベッド上の介護があたり前だった病棟で週1回の病棟レクリエーションを行い離床することが習慣化しました。

 

「寝たきりの患者さんをどうすれば離床できるか?」と私や病院リハスタッフは考えるようになり、検討会や勉強会(fig23-3)が始まりました。

 

〈fig23-3  院内勉強会〉

そしてこの体験が、今もなお活動している富士富士宮地区シーティング勉強会(fig23-4)となり、光野とともに行った数百例の症例検討内容が、2冊のシーティングノウハウブック(ヒポ・サイエンス出版)になりました。

〈fig23-4 来年で10年目を迎える勉強会〉

 

また来週、木曜日に別の患者さんでシーティングの醍醐味をお伝えします。

 

令和元年1121日 木曜日

ももはクリニック石坂 

作業療法士 シーティングエンジニア 介護支援専門員 認知症ケア専門士

串田 英之