入院してから1年半近くも離床できなかった症例の寝姿です(fig21-1)。

〈fig21-1 枕にうずもれる症例〉

 

ベッド一面を埋めつくすマクラが、彼の体動の激しさを物語っています。サイドレールの金属部分は、体があたって受傷しないようにクッションをくくりつけてあります。

 

寝返りができない彼は、介護士によって体位変換(両側の横向き、仰向けの3体位)を繰り返し、終日、ベッドで過ごしていました。脇に抱える枕、膝の間に入れる枕、横向きを支える長枕と大小20近くあったように思います。

 

これだけ配慮しても、唾液が気管(口と肺を結ぶ道)に垂れ込み咽ると、長い手足が暴れまわりました。時には、自分の拳が顔や首に当たり気管切開部(呼吸するための頚に開いた穴)を塞いでしまい、チアノーゼを呈しているところを発見されることもありました。

 

 病棟スタッフからすれば、彼の安全を図るためにあえて車椅子に乗せないという判断だと思います。これも間違った判断ではなく病棟スタッフを責めることはできません。

 

 

さて同情から動いてしまった私が、行った結果はこれです(fig21-2)

〈fig21-2 未熟な私がただ乗っけた!?だけの症例  〉

 

シーティングと言う言葉は知っていても知識・技術とも未熟な自分にとっては、これが限界でした。当時、偶然にもシーティングのパイオニアとして精力的に活動していた光野有次と交流を持てる機会がありました。彼に相談すると「別日に伺って症例をみましょう」と快諾してくれました。

 

そして光野が私の目の前で一連のシーティング評価を行い、鮮やかに彼の座位姿勢を変えた写真がこれです(fig21-3)。

 

〈fig21-3 ちゃんと評価すれば同じ車椅子でもこんなに座れる!!〉

 

まったくの別人に見えるでしょ!これが「シーティング技術」です。

 

その後、考えも着かない様々な変化が私たちの目の前で起こっていくのでした。

 

続きは、また次回にします。それでは来週木曜日にお会いしましょう!

 

令和元年116日 水曜日 

ももはクリニック石坂

作業療法士 シーティングエンジニア 介護支援専門員 認知症ケア専門士

串田英之

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