早くも20回目の連載になりました。

今日からは症例を紹介しながら、シーティングの重要性を説明していこうと思います。まず11年前に私がシーティングに傾倒するきっかけになった思い出の症例から紹介します。

 

 彼と会ったのは、湖山リハビリテーション病院(当時 湖山病院)の医療療養病棟に配属された時です。

それまで、回復期リハビリテーション病棟という脳血管疾患などの後遺症を抱えた患者さんの残存能力を引き出し、社会復帰を手助けする病棟で働いていました。後遺症が軽い方は、入院期間中のリハビリによって社会復帰されていきます。

しかし重度の後遺症を抱え医療介護が絶えず必要で在宅生活が困難な症例は、この医療療養病棟に入院加療されています。

 

彼は、その病棟の患者さんの一人です。そして自分と同い年で、同い年くらいの子供あり。僕と同じお父さんなのです。

一症例というより、同じ立場の父親として彼の悔しさや彼を支えている家族の気持ちが手に取るように想像できました。

 

 家族に挨拶し伺ってみると、実母は「この子はこの病院に入院してから1年半、ほとんど車椅子に乗ったことがない!」と、僕に話してきました。私はその言葉を理解できず、スタッフに尋ねると、「この患者さんは、ベッド上でもむせこみが激しすぎて、むせ込むと不全麻痺した四肢がサイドレールや備品の戸棚に衝突して生傷が絶えないの!こんな状態では、車椅子から落車してしまうから乗せられません!!」という理由でした。

 

  しばらく観察していると報告通り、唾液のむせこみと同時にコントロールを失った長い手足は、まるで脱線した列車のように周囲の物と衝突を繰り返し、そこには大きなあざが新たに生まれていました。

 

続きは、また次回にします。

それでは来週木曜日にお会いしましょう!

 

令和元年1031日 木曜日 

ももはクリニック石坂

作業療法士 シーティングエンジニア 介護支援専門員 認知症ケア専門士

串田英之