早くこの仕事を片付けて

息子を迎えに行かなきゃ又大荒れだわ 

嵐になる前に・・・

 

その時だった 素敵君が

僕が終らせておきます

さあ 息子さんを迎えに行ってあげてと

 

本来なら断るべきなのだろうけど

素敵君と繋がってみたかったのね

敢えてそのご厚意に甘えることにした

 

どうして??

心に淡いピンク色した花が咲き誇っているのは

つまり恋なの??

ずっと忘れていた恋心なの??

 

ふぅー 間に合った

何時も通り私を見るや否や

猛ダッシュ

そして抱きついてくる

 

我が子だから可愛い

けれど我が子だから不安になるの

 

思い切って小児科を訪ねてみる

 

先生曰く 

何の異常も見当りません

孤独の檻の中で生まれた

運命共同体意識なのかもしれませんが

時が解決してくれるのを待ちましょう

 

翌日 早めに出社すると素敵君一人

 

踊る心を隠しながら

先日は本当にありがとうございましたと

 

いえいえ 当然のことをしただけですよ

そうだ 近くに女性がシェフをしている

美味しいパスタの店があるんですが

お昼ご一緒しませんか??

キラキラと輝く目で・・・

 

学生時代大好きだった彼が

クリスマスに

前から欲しかったハンドバックを

プレゼントしてくれた時の

あの目 よみがえる

 

涙が出そうになるのを堪え

はい!!行きます!!と・・・

 

素敵というより優しいエスコート

弾む会話

遠い日の花火の様

外に出ると

赤・黄・橙 三本のチューリップを手渡されて

添え付けてある手紙には単刀直入に

貴女が好きです

息子さんの事も含め気長に待ってみますと

震える心で受け止めて・・・

 

幼稚園に着く

何故か抱きついてこない

不安そうな顔をして

ママ遠くに行っちゃうのと

 

こんなにも幼い洞察力で

この浮かれた気分を見抜いたのね

彼を強く強く抱き締め

ママは何処にも行かないよ

 

彼の引き攣った顔は少し緩んだが

それ以来

(ママ何処にも行かないで)が口癖になる

 

だが素敵君とデートを重ね

例えて言うなら

朧げだった線香花火の火が

今や大輪の打ち上げ花火が如く燃え盛っていた

 

東京タワーのオレンジ色の光を前に浮かぶ

二十一回目のキス

溶けてゆく私の身体を受け止め

(日曜日 息子さんに会いに行く)

僕なりの決断だ

 

分かってる

何時かは潜らなければならない火の鳥居

 

東京タワーが放つ

定めの光は強く激しく

 

ピーン・ポーン

 

我が家に緊張が走る

いや そんな生易しいものではない

雷鳴が轟くとでも言えばいいのか

 

私と息子 二人で玄関のドアを開ける

 

息子が叫んだ

パパが帰って来た

パパ何処に行ってたの

パパもう何処にも行かないで・・・・・・・・・・・・