にゃんこが私にしてくること

 

 

猫は(可愛い)という言葉を

思い出させてくれる

 

それは橋本環奈ちゃんに

ときめいてしまった

中年男の(カワイイ)という

野太い声とはちょっと違う

 

俺は

生涯猫を飼うことはないだろうが

猫が好きだ

 

隣の家に住む猫を見る限り

奴は魔性の女

 

俺を見つめ

愛嬌を振り撒きながら誘ってくる

近付いてゆくと

ニャオーという湿った音を残し

家の中に消えてしまうんだ

構って欲しくて

その残像を追いかけ不法侵入でもしてしまえば

捕まってしまう

とんだ食わせ者だぜ

 

俺の頭の中に棲みついた猫も

そうなのだろうか??

 

奴を抱きかかえ襟裳岬に立ち

夕陽を眺めてみたいものだ

 

なあ

北の町では哀しみを暖炉で

燃やしている頃だろう

 

俺もお前も

訳の分からないことで悩んでしまい

ドツボにはまってしまって

抜け出せない間に

老いぼれてしまわぬよう気をつけなくちゃ

 

ニャオー

 

そうか・・・そうだな

そういうのは人間という愚か者の特権か

 

俺はいじけた人生を甘やかしすぎちまってさ

身構えながら話す癖がついてしまった・・・

 

ニャオー

 

そうか

人間多かれ少なかれそんなもんさ・・・か

 

さあ寝ようぜ

 

ニャオー

 

人間の愚痴を聞くのも大変だ・・・ってか

 

いい朝だ

今日こそ襟裳岬に行こう

お前も来るだろ??

 

ニャオー

 

よし 北へ向かうぞ

俺達は北へ北へと走り出した

 

やがて白河の関を越え

そして杜の都に聳え立つ独眼竜

もうすぐだ

その時だった

俺の心の中を臆病風が吹き荒れる

 

本当に襟裳岬に立ち

大海原にこの卑屈さを見透かされてしまったならば

生きていけるだろうか

 

奥州手前で踵を返し南へと逃れる弱虫

 

ニャオー

 

ごめんよ

寒がり屋の俺に遠慮はいらないから

温まってゆきなよと言ってくれる

優しい人達が待ってくれているというのに

 

鳴る鈴の音を聞きながら俺はひたすら泣いたんだ・・・・・