久方ぶりの甘美な誘惑

予てからの強い願望

待ち焦がれ過ぎた春の嵐に

この身を委ねる

 

胸の奥の一番深い所に

処女を閉じ込め

 

貞節という言葉を

丁寧に折り畳み

密やかに密やかに

箪笥の奥に仕舞い込めば

 

淡々と溜息を漏らす

 

艶やかでしかし控え目な衣裳を纏い

煌びやかにしかし薄化粧

 

人目を避け俯きながら

繁華に逃げ込めば薄笑い

 

図ったかのように

待ち人は現れ

手も繋がず

逢引の宿

 

粋なんて時間の無駄よと

一語を交わし

すぐさま

細い吐息を絡め合わせ

纏った艶を一枚一枚剥がされて

彼の手の内にある

この弱み

一部始終を

繊細な絵筆が

這いずり回る

 

明け渡してしまった母船は

呆気ない程に無抵抗

 

泣きじゃくるは

これ以上ない程に隆起してしまった花芯と

取り囲む黒紫色した花弁

 

拭い取っても 拭き取っても

まだ泣きじゃくり

遂にはその本能を突き出してしまう

 

接合部分が何度も何度も

火花を散らせば

悦びは天を舞い

 

舞い落ちて事が終れど

突如寂しさに襲われ

 

再びをせがむ

 

女の性(さが)

 

 

(不貞の唄)(momijizaka)

 

優子さん

貴女と僕は

薄紅色の糸でしか

繋がっていないのですね

 

だからこそ

今日は

真っ赤なドレス作ってきたんだ

 

どうかこのドレス着て欲しい

そして魅せて欲しい

 

僕の真っ赤に籠めた想い

わかってくれるよね

 

嗚呼

なんて美しいんだ

貴女と

貴女だけの為の世界で一着

 

さあ

燃え上がる様なキスで

この麗しくも不純な刻を飾ろう

 

優子さん

今日のこの時間をありがとう

 

本当の赤い糸で繋がった人の元へ

 

だから

そのドレスは何処かに捨てて

今日だけの命だから

 

そして

今度こそこの儚い薄紅色の糸を切ろう

 

さようなら優子