当時十七歳の俺は

世の中がおかしいのではなく

自分自身がクレイジーなのだと自覚していた

 

多分俺の頭の中には

例えば

羽を広げた鳳蝶が入っているだとか

それとも薄紫色の林檎???

 

不意に

十七歳の地図の中心に立って

ここまでの足跡を辿ってみた

 

悲しいくらいに凡庸な家庭に育った俺は

人並みにセンチな溜息も吐くし

喧嘩にナンパ

愚痴もこぼす

 

だが

学校の先生は 

アイツは将来

とんでもない事をしでかしかねないと

親を脅した

 

親の心配を余所に

 

先生言う通り

俺の頭の中は一段とクレイジーに

磨きがかかって行った

 

不安になった俺は

理由(わけ)もなく

退屈を持て余している

美術教師のアトリエの門をたたく

 

彼は薄笑いを浮かべながら

お前が

ヤクザな道を進むか

それとも此処に助けを求めて来るか

賭けていたが

やはり此処に来たか

そう言った

 

退屈を持て余した美術教師と

クレイジーな生徒の葛藤を

夕暮れが紅く染めてゆく

 

生徒は紅く染まったこの時間と

不完全さの中に

平安を見いだす

と同時に一生懸命と云う言葉の意味を知る

 

かけがえのない日々の連続の最果てに

卒業をも見た

 

さらば友よ旅立ちの刻変わらないその想いを

(さくら)を口遊みながら校門を後にした

 

凡庸が吹き溜まったこの街の一角に

奇人変人達を甘やかしてくれる場所が有ると云う

其処に忍び込む

 

並み居る奇人変人達の中で

擢んでた奇人変人に成り上がること

 

奇妙な逃げ口上の様だが

それは(芸術は爆発だ)という言葉の

斜め上を行くことなんだ

 

想像し創造し

内面の小宇宙が膨張し過ぎて

ビッグ・リップ寸前まで辿り着けば

不安定な勝利

 

さあ 貧乏人は貧乏人らしく

世界中に有る全てのアトリエに

膝蹴りを入れたなら

心の旅に出よう

 

渋谷

響き渡る(小さな恋の歌)

橙色に染まった歓楽街へ

雪崩れ込む女の子達

向かう先はキャパクラ

 

セシルマクビーを羽織り

ジャドールの匂いを漂わせ

タトゥーの入った細い足で

 

立ち竦む一人の少女を攫って

ラブホの中で禅問答

 

彼女・東京・断片・気運・心色・・・

無愛想が故強く愛に飢えた作品に

仕上がる

 

天国のサンローランの優しい笑みが

心を掠める

 

彼女がテキーラを飲み干し

酔い潰れるのを見届け

次なる旅路へ・・・・・・・・・・・・・