新作DVDにて観賞

解説
人気漫画家・西原理恵子の元夫で戦場カメラマンの鴨志田穣が、自身のアルコール依存症の
経験をつづった自伝的小説を映画化した人間ドラマ。
重度のアルコール依存症になった男と、彼を支え続けた家族たちの日々を、『わたしのグランパ』
の東陽一監督が丁寧に描き出す。
身勝手だが憎めない主人公を浅野忠信、その妻には『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の永作
博美がふんする。
どん底の状況で主人公が自分と向き合い、家族という心の居場所を見いだしていく姿が胸を打つ。

あらすじ
戦場カメラマンとして世界中を駆け回ってきた塚原安行(浅野忠信)は、人気漫画家の園田由紀
(永作博美)と結婚し子どもにも恵まれるが、彼のアルコール依存症が原因で離婚。
やがてアルコール病棟へ入院した安行は、そこで出会った人々との触れ合いに不思議な安堵
(あんど)感を覚える。
家族の深い愛情に支えられ、安行は穏やかな日々を取り戻すが……。

以下ネタバレあり

西原理恵子の元旦那、鴨志田譲の闘病記にスポットをあてた本作は、映画「毎日かあさん」

にもそのエピソードが描かれていたが、今回は彼のアルコール依存症治療の閉鎖病棟での交流

が大きなウエイトを占める。

断酒を繰り返しは挫折し、今度こそ吐血したら、死ぬよと医者からのアドバイスと家族からの

励ましで、アルコール依存症治療専門の病院に入院することを決めた塚原安行。

元妻は入院にあたって知り合いの医師からもアドバイスを受けていた。

「他の病気の患者と違って、アルコール依存症患者に同情する人はいないからね。世間は自業

自得としか見てくれません。

だから本人と家族に絶対治すという強い意志がないといけません」

塚原は閉鎖病棟で筋金入りのアルコール依存症患者と共同生活をしながら、食事係として

みんなのお世話をすることになった。

先に入院していた患者、光石研などは「中学校の頃からアルコールを飲み続け、30歳の頃には

立派な依存症になっていた」と自分の体験を話す。

塚原もその病院で「これまで酒を飲んでは妻に暴言を吐き、暴れて迷惑をかけてしまった。

今では深く反省している」と自分の体験を話すうちに言葉に詰まる。

一方、元妻は夫が倒れたとき、別の病院で検査を受けた結果を聞きに行ったとき、医師から

「もう長くはないので本人をうちに戻し、この際、よりを戻しいっしょに生活しませんか」と

余命宣告を告げられていた。塚原にガンが見つかったのだ。

塚原本人も自分にガンがあり、外科治療ができず、後は余命を残すだけということを知る。

川辺で水遊びをする塚原、その寂しい背中を後ろから見守る元妻。

家族4人揃って、海に行くシーン。これが家族そろっての最後の行事になることを暗示させる

終わり方。バックに流れる忌野清志郎の歌声がこのシーンと重なって切ない。

A Day In The Life