ミイ子「あ〜またやっちゃったよ。」
マリカ「また寝る前に鏡の前で反省会でも始めたの?」
ミイ子「違う!夕ご飯のデザートにプリン3個!」
マリカ「フルマラソンでも走ったの?なんで3個も?」
ミイ子「冷蔵庫開けたら目が合ったの。頭にクリーム乗せたプリンたちと。まるで“選ばれし者よ”って顔してた。」
マリカ「あなた、冷蔵庫の中に物語を見つけるタイプだったわね。」
ミイ子「1個目でスイッチオン、2個目は流れ作業、3個目罪悪感。」
マリカ「それ、血糖値の暴走ね。」
ミイ子「気がついたらスプーン持ったまま放心状態だった。あれ?なんで3個も空の容器?って」
マリカ「プリンって小さいのに、罪のサイズが大きいのよね。特にクリーム乗せてるやつは、お腹より心にくる。」
ミイ子「わかる。後悔という名のカラメルソースが心に沈殿してる。」
マリカ「なにその詩的に見せかけた内臓の悲鳴。」
ミイ子「でもさ、こういう“身体に悪いのにやめられない”やつ、絶対誰にでもあるでしょ?」
マリカ「そうね。私は最近電動昇降デスクのレビューの読み漁りがやめられないわ。」
ミイ子「それは健康的じゃない!?家で極力座らないなんて、むしろ意識高い系!」
マリカ「いや、買うつもりないのに3週間くらい毎晩レビュー読んでるの。深夜2時に『このモーター音、静かすぎて泣いた』ってレビュー読んで、ドライアイがひどくて泣きそうになったわ。」
ミイ子「てか買ってないの?」
マリカ「動画まで見てる。天板がスーッと上下する様子を見て、『これが…現代の静寂か…』って思うのよね。」
ミイ子「それもう瞑想の域じゃん。てか買いなよ!」
マリカ「買ったら終わっちゃうでしょ、この旅が。」
ミイ子「どこに向かってんのその旅!?デスクは旅のゴールだったの!?え!?いつから!?」
マリカ「さあ、いつからだったかしら。電動昇降デスクが昇降するたび、私の心も上がったり下がったりしてるのよ。」
ミイ子「その心、血糖値上下してる私より忙しいじゃん。」
マリカ「しかもね、レビューの『配線がごちゃつきますが、愛でカバーしてます』とか読むと、ああ…私の部屋にも“愛”足りないな…って。」
ミイ子「なんで配線から愛の話になってんの!?精神のジャーニーが深いだけ?とにかく目に悪いから、さすがに深夜まで没頭するのはやめなよ。現物買って、旅終わりにした方がいいと思う。ちょっとメンヘラ入ってるって。」
マリカ「メンヘラってあなたのことじゃない。夜プリン3個も食べるなんて、普通の精神状態じゃないわよ。」
ミイ子「いや…食後にちょっと甘いものって思って、そのちょっとがプリン3個なんだと思う。」
マリカ「“ちょっと”の定義、森のクマさんよりおおらかじゃない。」
ミイ子「いや、最近のクマはそんな大らかじゃないでしょ。クマさんとか呼べないレベルよ。」
マリカ「少なくとも、『お逃げなさい』なんて忠告はしてくれないわね。」
ミイ子「…。」
マリカ「…。」
ミイ子「さっきの話に戻るけど、自分でも思う。私の、プリンにおけるちょっとの定義って、もしかして人とだいぶズレてるのかもって。でも、1個食べるとね、口が続編希望って叫ぶの。」
マリカ「それ、映画ならだいたい失敗作のパターン。」
ミイ子「続編は大抵面白くないんだよね〜。わかる〜。」
マリカ「で、最終的に後悔というエンドロール。」
ミイ子「エンドロールに流れる曲が“あぁまたやっちゃった…”って歌詞のバラード。」
マリカ「作詞:胃、作曲:膵臓。」
ミイ子「歌:内なる私。」
マリカ「どの内臓が一番泣いてるか、年末に発表してほしいわ。」
ミイ子「NHKの特番としてね。」

