ミイ子「ねえマリカ、おねえちゃんの誕生日プレゼント、何にするか決まらないんだよね〜。」
マリカ「またノリと勢いだけのプレゼント選手権が始まったわけね。」
ミイ子「ちょっと、それ言い方!」
マリカ「事実を述べただけよ。去年なんてスワン型加湿器をプレゼントしようとして、自分のものにしてたじゃない。」
ミイ子「あれは…自分が欲しくなっちゃっただけ!」
マリカ「プレゼント用に買ったものが自分のものになるシステム。ある意味、革命的ね。」
ミイ子「うるさいな。今回はちゃんと“おねえちゃんファースト”で考えるもん!」
マリカ「ふーん。で、なにかしら候補ないの?」
ミイ子「去年おねえちゃんが私にくれた、プリン研究所のプリン6種セットをそのまま贈るのもありかなと思ってる。あれ最高に美味しかったから、おねえちゃんにも味わってほしい!」
マリカ「…ちょっと待って。つまりあなたがもらって嬉しかったものを、そっくりそのまま相手に返すってこと?」
ミイ子「そう!」
マリカ「プリン好きなのはあなたであって、お姉さんじゃないでしょ。」
ミイ子「えっ…まあ、そうだけど。プリンって、ほら、なんか平和の象徴みたいじゃん?嫌いな人いないでしょ?」
マリカ「知らないけど、国連でプリンについての会議は開かれてないと思うわ。」
ミイ子「でもあのプリン、私、一口食べたとき脳内でオーケストラ始まったんだよ!カラメルで小澤征爾出てくるレベル!」
マリカ「あなたの味覚、小澤征爾まで登場するのね!」
ミイ子「だからさ、クラッシック好きのおねえちゃんにもこの感動を…。」
マリカ「いや、たぶんお姉さん、『冷蔵庫の中にプリンあるな』で終わるわよ。小澤征爾登場するのあなたくらいなの。クラッシック好きだからってプリンあげても、一般人には謎なだけよ。」
ミイ子「…否定できない。」
マリカ「贈り物って、“自分が好きなもの”じゃなくて“相手がもらって嬉しいもの”でしょ。」
ミイ子「うっ、正論が、胸にズシッと…。」
マリカ「まあ、私だったら迷わず実用品よ。」
ミイ子「出た、マリカの実用主義!」
マリカ「だって、プレゼントが日常生活から出ていく感じが最高なのよ。残らない、場所を取らない、在庫にならない!」
ミイ子「え、それプレゼントの話というより、在庫管理の極意じゃん!」
マリカ「私が一番嬉しかった贈り物、なんだと思う?」
ミイ子「え〜、ハンドソープとか?」
マリカ「惜しい。500mlのしょうゆ。」
ミイ子「しょうゆ!?500ml!?なんでそんな地味で生活感あふれるものがベストプレゼントなの!?」
マリカ「いや、ちょうど切らしてたときに、すごくいいやつが届いたのよ。キッチンで後光が差してたわ。」
ミイ子「プリンでオーケストラが聴こえる私と、しょうゆで悟りを開くマリカ…。」
マリカ「後光差すしょうゆは最高よ。開けた瞬間、料理の神がちょっと降臨する感じ。」
ミイ子「ちょっと待って、それ私のプリンとノリが一緒じゃん!」
マリカ「違うわよ。しょうゆは日常が助かる系。プリンは祭りだわっしょい系。」
ミイ子「うわ、それすごい的確な分類…!」
マリカ「だからね、贈り物って、自分がテンション上がるものを押し付けるより、相手の日常をちょっと快適にする方が私はいいと思うの。」
ミイ子「ふむ…ちょっと快適か…。」
マリカ「お姉さんって、家でよく料理するんでしょ?」
ミイ子「うん、家自体がいつも美味しいにおいする。」
マリカ「じゃあ、調理関係で攻めてみれば?必要なキッチン用品でもいいし、ちょっと高級なオリーブオイルとか、こだわりの調味料とか。」
ミイ子「なるほど!オリーブオイルなら場所取らないし、実用的だし…なにより私が食べに行ける!」
マリカ「ほら結局、自分の利益も混ぜてきた。」
ミイ子「だってそれが妹の特権!」
マリカ「その特権、法的にどうなのかしら。」
ミイ子「よーし、プリンはやめて、高級オリーブオイルと調味料にしよう。日常の中でキラッと光る贈り物!」
マリカ「いいじゃない。プリン教から一歩、人間界に戻ってこれたわね。」
ミイ子「でもプリンは私が食べる。信仰は続く。」
マリカ「はいはい、信者は自由に祈ってて。」

