思っていたのとは違うけど、良い映画でした。
以下ちょっとネタバレです。
娘を殺されたミルドレッドは、進まない捜査に苛立ち、3つの看板広告を出します。
「娘は殺された」「犯人は捕まらない」「なぜ?ウィロビー署長」
この広告に反感を持ったレイシスト警官のディクソンは、
ミルドレッドや広告会社のレッドを激しく攻撃します。
なかなか捜査しようとしないので不思議に思っていたのですが、
どうやらこの映画はサスペンスミステリーではなく社会派ドラマのようです。
ディクソンが胸糞悪くて
「なんなんだ?この凶暴ママボーイは!」と思っていたのですが
中盤以降、変化が見られます。
彼が怒っていたのは、ミルドレッドでもなくレッドでもなく・・・
もしかして自分自身?
もしくはお母さん?
はっきりとは分からないのですが
おそらくディクソンは同性愛者です。
そしてそこは保守的な田舎町。
子供の頃から、母親の差別的な言動を刷り込まれ、
母親や狭いコミュニティから蔑まれる人間にならないよう、
「こっち側」の人間でなければならない。
でも本当の自分は「あっち側」。
一生懸命気づかないようにして、認めないようにして、
ギリギリのラインで生きてきたのでしょうね。
自分でない人間として生きるって、すごーく精神的に悪いんです。
おかしくもなるわ。
署長の死後に届いた手紙をきっかけに、
必死で築いてきた「こっち側」の壁が溶けていった感じです。
ミルドレッドも変わり始めます。
怒りと憎しみで心をいっぱいにしていると、大切な家族や友人を傷つけてしまう。
最後、ディクソンの言葉に彼女が笑うんです。
そういえば映画が始まって初めての笑顔!
悪い呪いが解けたようでした。
生きていると「怒り」が出ることがあります。
自然で大事な感情です。
でもそれは、本当に目の前のことに向けた怒りなのか?
「ゆるす」って誰を?
「怒りとゆるし」という、深いテーマでした。