ふ2022年4月27日から5月1日まで開演してした宮崎理奈さんプロデュース舞台「オフィスの国のアリス」
思えば、前作公演から約半年経った2021年3月8日に5月5日から9日までの公演を発表されましたね。
直前までしっかりと稽古もされてもうすぐ本番を迎えようとした時でしたが、感染症が流行するご時世が許してはくれませんでした。
ギリギリまで安全に開演するにはどのようにしたらよいかとみやりPを始めとするスタッフみんなが考えた結論として、中止という決断でした。
個人的にはご時世柄仕方ない部分もあると思ってましたし、何かしらの不安のある中での開演というのは彼女の中では何かが違うって思ったのかなと感じたりと、中止を発表した時の文章からは本当に辛い決断をされたのだろうなぁという想いが伝わってきました。
ファンとして出来ることって、諦めずに待ち続けてその灯火が消えないように応援をし続けることかなと個人的には思っています。
そんな想いから約1年。今年の3月に作品の公演が発表となりました。
あの時の本当にみやりさんの嬉しそうな顔が忘れられませんね。それと同時になんとかして無事の開演、誰一人欠けることのない完走をしてほしいという想いがこみ上げて来たので、京都奈良の旅行へ行った際は手当り次第の寺社仏閣にお祈りをしていましたね(笑)
その願いや祈りが叶ったかはわかりませんが、舞台は4月27日に無事に開演し、誰一人欠けることなく完走できたことは本当に嬉しく思いますね。
この舞台を観る前にそんな背景があり、開演までに来場者特典を増やしていただいたり、終演後のお見送りをしていただいたりと来てくれた人達に対して楽しんでもらいたいという、みやりさんの想いも本当に伝わってきた舞台でした。
前置きが長くなりましたが、内容の方にも触れていきましょう。
今回の舞台は現実世界と夢の世界
宮崎理奈さんが演じる主人公の華村美里は元アイドルで現在は化粧品会社に勤めています。
開幕して歌と共に扉を開けて登場するシーンは一緒にこの舞台の世界に私達も迷い込んだと思わせてくれる不思議な世界が一気に広がったという感じでしたね。あのシーン、初演の時はいよいよこの舞台が開幕したという想いで涙が溢れてきちゃったんですよね。
そして、夢の不思議な世界ではアリスとなって沢山の動物に囲まれて楽しく歌って踊るそんな夢を彼女はいつも見ていたようですね。
今日も迷い込んだの、夢の不思議な世界
嫌な現実忘れられる不思議な世界
私だけの国
彼女にとっては本当に楽園のような楽しい夢の世界に現れた彩木咲良さん演じる一匹の猫。
貴方はこのままでいいの?という呼びかけ、貴方はアリスではなく華村美里であると告げられる。
自分って一体…?戸惑う中で聞こえた妹の声に目を覚まし、一気に現実へ。
思えば、このシーンも何かしらの伏線だったのかなと思いますね。猫の問いかけと妹の呼ぶ声。彼女が夢から目覚めるきっかけとして大切なキーだったのかなと思います。
あと、美里さん。お仕事終わったら自室でアリスの衣装に着替えていたのに妹が驚いてないということは普段からその格好してたのですかね…?
現実では仕事の失敗、かつてアイドルをやっていたことに対する周りからの目というのが美里を苦しめているようにも見えました。
あれほど明るく楽しそうだった夢の世界での表情と余裕がなく目標も見失いかけてた現実での表情では雲泥の差。
久しぶりに会った荒井レイラさん演じるメイクさんのミミさんにも元気がないと心配されてしまってもいましたね。
アイドルとして特別だった自分と社会人としての自分というギャップに苛まれる姿も観ていてこちらも苦しくなるそういった感情になりましたね。
かつて所属していたPuppet Partyのメンバーである増井みおさん演じる香、浜浦彩乃さん演じる潤美、長谷川晴奈さん演じる美貴に対しても辛く当たってしまう場面なんかもありましたね。
本当に失敗続きであったためだと思いますが、この辛い現状から逃げたいという気持ちが彼女を素敵な音楽が導き、うつろな表情のまま嶋梨夏さん演じる狼谷和音さんの運転する車の前に飛び出してしまい、そのまま昏睡状態となり夢の世界へと迷い込んでしまいます。
不思議の国のアリスはウサギを追って迷い込んでしまうというのが大筋のストーリーですが、この物語はミミ(ウサギ)さんとの仕事でのやり取りにおける失敗が夢の国へ誘われる一つのきっかけだったのかなとも思いました。なので、まず重要なキャラとしてウサギのミミさんと不思議の国のアリスでもチェシャ猫というキャラが出てくるので猫の仁愛さんはキーとなるポジションなのかなと。
そして、美里が昏睡状態の中この状況から目覚めさせるには夢の中へ行き、彼女を目覚めさせるしかないと提案する仁愛。
夢の中でも会いたいと願えばその人の夢に入れるって言うのも、別の作品にはなりますが夢は繋がっているという部分がふと頭をよぎりましたね。あと、彼女にとってアリスになっている夢はいい夢であるから誰にも話さなかったのかなと思っていて、「話す」→「離す」って解釈もあるって別の作品でも聞いたことがあるから、そういった迷信めいたものがあって彼女は自分の観ている夢を語らなかったのではないかと勝手に解釈しています。
夢の世界に着くと美里を助けたいと思ったみんなは全員動物になりましたね。大体がみんな名前にかかった動物になっているって部分がある中で、何で妹の侑李はシマウマなんだろうなというのは不思議なところですね。
シマウマの柄はボーダーラインって言ったりするかなと思うので、わりと彼女の声掛けでみさとは夢と現実のボーダー(境界)までは呼び戻せていたような気がしますね。ただ、そこから夢を選ぶか現実を選ぶかは美里自身の選択に委ねられていたかなと思いました。
夢の中の住人で最初に出会うのは森岡悠さん演じるライオンと古賀成美さん演じるヒョウ。
後程、仁愛から夢の中の住人に本人の意思はない、彼女自身が作り上げたものと言っていたので、助けに来てくれたみんなは草食動物であることと共に彼女にとっては大好きな人たち=「大好物」という言葉がライオンから出てきたのかなと思ったりしました。
そして、襲われている途中で降臨したミミさんは後半4公演でだいぶ面白い登場シーンになっていましたね。
また、大事なシーンとしては妹が肉食動物に襲われている時、飛び出すように美里が駆けつけてくれました。上記の彼女が作り上げた存在である夢の世界の住人がやっていることは彼女もある程度感知できていたということでしょうかね?
ただ、助けはしたものの即座にみんなに対して帰れと言い出す美里。自分をこの世界から現実へ連れ戻しに来たと薄々気づいていたからの拒絶だったのかなと思いつつ、そこからミミさんに現実での自分がどうなっているのかを告げられると一気に態度が急変。
さっきまで、みんなのことを知っていたはずなのに急に知らないと言い放つ姿はアリス・イン・ワンダーランドの赤の女王を彷彿とするような喋り方となりましたね。
まるで、自分の記憶を封印するかの如く一瞬で変わったのは驚きですし、ここまでガラリと変わるのはみやりさんの演技力の高さが伺えますね。
また、この部分では現実から目を背けるかのごとく、助けに来たみんな話しかけている時は背を向けて目を合わせないというのが印象的でしたね。
私を楽しませなさい、さもなくば即刻この国から退去。
舞台上の一番高いところから見下ろしたアリスから宣告されて助けに来たみんながやったのは一発ギャグ(笑)
各公演で代わる代わるキャストの皆さんが一発ギャグを挑戦していましたが、個人的に特に面白かったのは長谷川晴奈さんの畳みかけるPPAPネタでしたねw
笑えるシーンではあるけれど、この部分は現実の自分が楽しめていないという現れ。
特に印象的なセリフとしては仁愛と涼本奈緒さん演じる高原先生(ウシ)のやり取りの中で
「自分が楽しむためには自分自身がそうなるように努力をするしかない」
このセリフは自分自身にも刺さる言葉。自分も職場が変わって大変ではあったけど、その場所で与えられた役割を果たすために努力をしたから現在の自分がいると思ってますし、また異動とかで場所が変わっても努力はしないといけないなと思わせてくれました。
そして、物語は救出メンバーで唯一の肉食動物である狼さんを加えて再びアリスの国へ突撃。
一方アリスはたぬきさんを門番に据えて、キリンさんのパフォーマンスに「楽しい!」とご満悦。
ただ、なんとなくこのシーンの彼女は無理に楽しいと口に出しているようにも見えましたね。
キリンさんからアイドルをやっていたことを告げられても、そんなことは覚えていないと一点張り。
そこへ救出メンバーが到着し、和音さんの一発ギャグ(レパートリー全公演分用意)を披露しましたが、彼女の心には刺さらず…
痺れを切らした香がPuppet Partyの代表曲「Puppet fantasy」を披露するも、美里のパートが来た時急に曲を止めます。
「どうして曲を止めたの?結構楽しかったわよ」
とアリスに言われて、パペパのみんなは想いをぶつけました。
特に印象に残るのは美貴が自分の名前を告げてアリスに、美里に訴えかけるシーンは素晴らしかったですね。
美貴の名前、「貴方は美里」にかかっていたら面白いなと思いましたし、だから彼女は呼びかけたのではと思ったり…
パペパのみんなからと侑李からの呼びかけで少しずつ閉じ込めていたものが出てきそうになるアリス。
みんなからの呼びかけ、そして仁愛の過去が明らかになることでついにアリスは美里としての記憶を取り戻しました。
物語の序盤で仁愛が問いかけた「貴方はこのままでいいの?」は実はかつて自分が夢の中で美里に問いかけられた言葉でした。
夢の中では全部思い通りになる。でもそれって本当に楽しい?
みんながみんな自分の味方ではない。思い通りに行かない。
でも、それだからこそ自分のやりたいことをやり遂げた時の達成感は本当に素晴らしいことである。
美里から仁愛に贈られた言葉です。
今の仁愛が美里に最も贈りたかった言葉だったのでしょうね。
このことがきっかけで美里は全てを思い出し、新たな一歩を踏み出すべく夢の国の住人とパフォーマンス対決を挑みます。
ここからがライブパートということで和音さん、ミミさん、高原先生がMCを務めていく形になりました(この時高原先生のフルネームがみんなにバレます)
1曲目はPuppet Partyによる「puppet fantasy」
美里がフェネックとなって一夜限りの復活。ようやくフルバージョンで聴けたこの曲は本当に素敵な曲でしたね。
2曲目は肉食動物さんによる「low of the jungle」
オフィスの世界もまるでジャングルのような弱肉強食の世界。一つの失敗が命取りになることや一人きりじゃ生きられないことなどを教えてくれましたね。
そして、3曲目は編美さんと美里のデュエット「首を長くして」
編美さんの素晴らしい歌声とそれでも好きな気持ちは忘れて欲しくはないかなって自分は思ったりしました。あとは、美里に歌ってと促すような振付は本当に素晴らしかったですね。
4曲目は侑李と仁愛による「ねえ、このまま」
二人がまるでこのままでよいのか?と呼びかける様な歌詞。とても明るい歌ではありますが、美里に新たな一歩を踏み出してほしいと願う歌でもあったのかなと思いました。
最後の5曲目は「夢を見た」だったかと思います。
全員登場で披露された歌は本当に素晴らしかったですね。美里が一番最初に「最後に夢を見た」という歌声本当に力強くそして、少し切なくなるそんな風に感じられましたね。あぁ、これでもうこの物語も終わりを迎えるのかな…と思わせる素晴らしいセトリでした…
そして、曲が終わり現実世界に戻った美里は職場に復帰し元気よく「おはようございます!」と挨拶をして物語は終えました。
美里は新しい一歩を踏み出しましたが、これからも自分の実力不足だったり思い描いていたものと違う道を歩むかもしれません。それでも、自分のことを大切に想ってくれる人の存在や思い通りに行かない時でもそれを乗り越えれば素敵な未来が待っていることを彼女は改めて認識できたので、きっと大丈夫だと私は思います。
そして、私自身もそのことを胸に刻んでこれからの仕事を頑張っていきたいなと思いました。
そして、最後はキャスト紹介も兼ねた「puppet fantasy」をキャスト全員で歌って終幕となりました。
華村侑李/シマウマ役 上西恵さん
全体を通して物語のカギとなっていて、本当にお姉ちゃんが大好きであることが伝わってきてお互いを想い合っている素敵な姉妹でしたね。
夏梅仁愛/ネコ役 彩木咲良さん
彼女が居なかったら、美里は目を覚ますことはなかった。夢の中でも会いたい。人は夢の中なら繋がれる。夢の中で出来た縁も大切にして、自分を助けてくれた美里を助けたいと想うその気持ちが奇跡を起こしたと言っても過言ではありませんね。
兎丸ミミ/ウサギ役 荒井レイラさん
一回スイッチが入ると止まらない印象ではありましたが、終始美里を心配していて物語の中では彼女の呼びかけもとても重要なものでしたね。あとは、登場シーンを含めた所々ある面白シーンは本当に最高でした。
日村麻戌子/イヌのヒムヒム役 片山陽加さん
部長としての姿は若干抜けている部分はあれど、ミスに対してはしっかりと指摘する上司でしたね。ヒムヒムの時は会社に対する忠実な姿勢が忠犬として現れたのかなと思ったりしますが、最後に美里にオフィスでの心構えについて諭してくれたところは良き上司の姿でしたね。
黒原玉水/ヒョウ役 古賀成美さん
THE・仕事のできるお姉様という感じがとても凛としていて素敵でしたが、ヒョウになった際は表情が柔らかくなっていたのもまた良かったところですね。
赤佐紗凪/たぬき役 松村芽久未さん
やや気が弱いためか肉食動物というよりは雑食に分類されるたぬきだったのかなと勝手に思っています。ただ、同じ立場に近いものとして今後2人で頑張っていく姿も観てみたいなぁなんて思ったりします。あとは、「です!」とか微妙に強く出れないところがとても可愛かったです。
宍野礼央/ライオン役 森岡悠さん
職場ではグループをまとめるリーダー的な存在なのかなと思いますので、チームを引き締めるためにもあえて厳しいことを言っているのかなと思ったりしました。夢の世界では真顔で「ヒムヒムおはようございます」と挨拶する姿はめちゃくちゃ面白かったです。
桐谷編美/キリン役 溝手るかさん
会社メンバーで一番優しく美里に寄り添ってくれた頼れる先輩。夢の住人にしてはやけに自我があったようにも見えましたが、それも美里に一番寄り添ってくれていたから現実とのギャップが少なかったのか、それと実は草食動物なので美里に対して危害を加えない人物であるのかなと思いました。あとは歌のパフォーマンスが本当に最高でした。
狼谷和音/オオカミ役 嶋梨夏さん
ネガティブな感じなのは事情が事情だけに仕方なかったですが、それでも精一杯自分のできることを頑張った姿勢は本当に素敵でしたね。一発ギャグも毎日レパートリーを変えていたのは本当にすごかったです。
高原みるく/ウシ役 涼本奈緒さん
「もー!」って言うセリフ最初は気づきませんでしたが、あとから牛である=「もー!」って指摘が入ったのでよく聞くと現実パートから使ってましたね。専門的なことを求められるより専門外のことで輝いていたのはとてもよかったです。
綿原潤美/ヒツジ役 浜浦彩乃さん
美貴の指摘通りややふわっとした部分はありつつも仲間のことを大切に想っている姿はとても素敵でしたね。どちらかと言えば香に乗っかってボケをかまして場をさらに盛り上げたり、しれっと的確なツッコミを入れる姿もまた面白かったです。
竹熊香/パンダ役 増井みおさん
終始場を引っ張って物語をぐいぐい進めつつ、とにかくボケ倒すので本当に面白かったです。私パンダだった!で落ち込む姿や顔芸などとにかく面白ポイント一杯だった中でも美里を元の世界に戻したいという想いは本当に人一倍強いなと感じる部分がとても多かったですね。
智由多美貴/ネズミ役 長谷川晴奈さん
とにかく細かいツッコミが多くて舞台上を駆けずり回ってる印象が強かったですね。ツッコミも公演を重ねるごとに熱が入りどんどん面白くなってきたのが印象的でしたね。そして、なんといっても美里に呼びかけるシーンなど彼女も美里を大切に想い熱くなるシーンがたくさんあったのがとても素晴らしかったですね。
あと、公演の3日ほど前までとある所に行ってて最終稽古に出ることが出来ていないのに本当に素晴らしい演技を魅せていただいたことに彼女の高いポテンシャルを感じますね。
華村美里/アリス役 宮崎理奈さん
我らがプロデューサーのみやりさん。本当にここまでなんとか辿り着けてよかったという安堵感が強かったのに、そこから美里として、アリスとしての振れ幅のある感情を表情や声、そして仕草などで表現をする姿は本当にいつも新しい発見やこうやって観ていくと物語もさらに面白く観れそうだなと感じさせてくれる所が本当に好きなんですよね。
とにかく彼女のやりたいこと、魅せたいもの、伝えたいことが詰まったこの舞台を自分の表現で私たちに届けてくださっているから本当に心に残る素敵な作品になっているのではないかなと私は勝手に思っています。
また、次回作があればいいなと思いつつ、枕を高くして寝ながら待ってみようかなと思っています。
みやりさん、出演された皆様、この公演に関わってくださったスタッフの皆様。
本当にありがとうございました。